研究課題/領域番号 |
17K18065
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
米田 竜馬 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (00734881)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | lncRNA / RNAメチル化 / TLS/FUS / CCND1 |
研究実績の概要 |
タンパク質をコードしないRNAであるlncRNAが、RNAのメチル化を介してcyclin D1の発現を抑制する機構を論文として発表した。cyclin D1のプロモーター領域より転写されるlncRNA, pncRNA-Dは普段、高いm6A修飾を受けている。このメチル化によりpncRNA-Dは分解されやすくなっており、さらにTLSとの結合が阻害されていた。しかし細胞が放射線や浸透圧ストレス等のダメージを受けると、RNA polymerase IIがpncRNA-Dのプロモーターにリクルートされ、その発現量が増強される一方、m6A修飾レベルは劇的に減少した。その結果、pncRNA-DがTLSをCCND1 promoterにリクルートし、CCND1の発現を抑えることを示した。令和元年度には、YTHDC1というRNA結合タンパク質が、m6Aメチル化によるpncRNA-DとTLSとの結合を阻害していることを明らかにした。またYTHDC1や、m6A修飾酵素であるMETTL3のノックダウンにより細胞増殖が抑えられることを見出した。しかし上記のノックダウンと同時にpncRNA-Dをノックダウンすると、細胞増殖が回復したことから、pncRNA-Dが細胞周期に関与していることをまとめて論文として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助機関最終年度だったということで、RNAのメチル化を介したlncRNAによるcyclin D1遺伝子の発現調節機構に関する論文を発表することができた。また学会発表でも多くの聴衆に聞きに来ていただき、今後の研究の発展につながるディスカッションを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
RNAのメチル化が細胞ストレスにより変化することを明らかにしたが、通常の細胞周期における変化なども観察していく。またCCND1の過剰発言が報告されているガンや神経変性疾患などにおいて、pncRNA-Dがどのような働きをしているのかを明らかにする。pncRNA-Dの相互作用相手であるTLSは、相分離による凝集体を形成することが近年のトピックスになっている。したがってTLSの相分離による凝集体形成に、RNAのメチル化が関与しているか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、本研究費で遂行したlncRNAのメチル化についての研究成果をまとめた論文を投稿準備中であったため。論文の質を高め るための追加実験に時間を要し、研究計画が遅延していることから補助事業期間の延長を希望したため。
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