本年度は論文発表を行うために延長した年度で、実際にRNAメチル化についての論文をJournal of Biological Chemistryに投稿することができた。lncRNAであるpncRNA-Dがm6A修飾を受けることにより、安定性が低下し、またその修飾をYTHDC1が認識することで、TLS/FUSとの結合を阻害していることを明らかにした。 pncRNA-Dは高浸透圧ストレスを受けることで、メチル化修飾が減少し、pncRNA-DとTLS/FUSとの結合が強まり、その結果として細胞増殖が低下することが予想される。実際にメチル化修飾酵素であるMETTL3をHeLa細胞でノックアウトすると、細胞増殖が抑えられ、同時にpncRNA-Dをノックアウトすることで、それがレスキューされることを見出した。つまりpncRNA-DがRNAメチル化修飾を解して細胞増殖に関わっていることを明らかにした。メチル化レベルが減少する原因としては、放射線処理や高浸透圧ストレスによりm6A修飾タンパク質であるWTAPとMETTL14の発現が抑えられるためだと示唆された。今回同定したpncRNA-Dのメチル化部位は、RNA結合タンパク質との結合には関与していたが、安定性には寄与していなかった。つまり今回決定した配列以外の箇所がm6A修飾を受け、pncRNA-Dの安定性を調節していることが考えられる。 これらの論文をもとに第43回日本分子生物学会のワークショップ「メチル化生物学 ―非ゲノムメチル化がもたらす新しい生命現象の理解を目指してー」に招待され、口頭発表を行った。
|