本研究ではプラスチック射出成形品のバリ取り加工の高効率化を行うために、バリ取りを模擬した厚さ0.1 mmのポリスチレン(PS)樹脂薄板を対象とし、放電誘起水中衝撃波とマイクロバブルの干渉を用いた革新的衝撃波バリ破砕加工法の確立を目指している。 本年度は,出力放電エネルギー5.2 J / pulse,放電電極と樹脂薄板との距離 9.0 mm,パルス放電回数2000shotの実験条件において,可視化計測と3次元デジタルマイクロスコープを用いた表面形状計測により,本衝撃波バリ破砕法への(成果1)マイクロバブル水中に薄板を設置した場合の放電の影響,(成果2) マイクロバブル水を薄板近傍に流入させた場合での放電の影響を解明した。本影響を評価するために,精製水中に樹脂薄板を設置したマイクロバブル付着無し薄板に対しても本実験条件で放電実験を行った。 本実験条において,(成果1)マイクロバブル水中でのマイクロバブル付着有薄板に対して,マイクロバブル水中で放電を行った場合,薄板の破砕は発生せず,塑性変形が生じた。(成果2) マイクロバブル水を薄板近傍に流入させたマイクロバブル付着有薄板に対して放電を行った場合でも薄板は塑性変形した。一方で,マイクロバブル付着無し薄板に対して,水中で放電を行った場合,薄板は破砕された。可視化結果より,マイクロバブル水中に薄板を設置した場合とマイクロバブル水を薄板近傍に流入させた場合,放電電極と薄板との間のマイクロバブル水が流入し,放電誘起水中衝撃波がマイクロバブルに干渉することにより,水中衝撃波の擾乱が観測された。マイクロバブル水は伝播する水中衝撃波圧力を減少させるため,パルス放電誘起の圧力負荷による薄板の破砕が発生しなかったことが判明した。よって,本衝撃波バリ破砕を可能とするためには薄板表面だけにマイクロバブルを付着させることが必要であることが示唆された。
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