研究課題/領域番号 |
17K18068
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
大竹 祐子 文京学院大学, 保健医療技術学部, 研究員 (70744374)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 足趾筋力 / バランス能力 |
研究実績の概要 |
若年女性を対象とし,足趾屈曲最大筋力・筋力発揮の調節能力の関係について調査し,卓越した 足趾運動が可能であるクラシックバレエ長期経験者と比較した.運動課題は安静立位からの体重移動とし,望月ら(2000)の方法を用いて姿勢安定度評価指標(Index of Postural Stability, IPS)を算出した.また足趾筋力測定器Ⅱ(TKK3364b)を用いて足趾屈曲最大筋力の計測,加えて足趾屈曲漸増運動を行いその滑らかさについて躍度を用いて算出した.結果,IPSは両群で差はなかったが,IPSの構成要素である安定域面積・重心動揺面積(中央・前方)ともにバレエ群で大きい結果となった.つまりバレエ群は安定性限界での姿勢保持に長けており,不安定ななかで安定を保つ姿勢戦略であること,被験者群の特徴によってバランス保持の戦略が異なることが示唆された.次に足趾屈曲漸増運動の滑らかさはバレエ群でわずかに低値を示し,安定域面積の前後比とに相関がみられた.足趾をよく使う訓練をしてきたバレエ経験者は,バランス保持に足趾機能の関与が大きく,足趾の詳細な筋力発揮が可能であるほどより広い範囲に体重移動ができ姿勢保持が可能であることが分かった.これまでの結果から,①運動特性によって立位バランス の制御方法が異なること,②足趾筋力発揮の調節能力が高いほど足圧中心の移動範囲が広くバランス能力が高いことが示唆され,足趾機能はバランス能力において日常生活の範疇を超えた,より高度な姿勢保持に役立つことが予想できた. 可搬式床反力計を用いて,足趾屈曲時の圧中心の移動および剪断力を計測する実験では,足趾機能の高いバレエ群でのみ計測課題を遂行することができた.足趾筋力発揮の調節能力と床反力計上の足趾屈曲剪断力はわずかに相関する傾向が見られた.今後被験者数を増やし,結果をまとめる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1、昨年の遅れが影響していること
2、予想していた結果と本研究課題の結果が少し異なったこと 足趾機能はバランス能力に大いに関連すると予測していたが,本研究課題以外の研究のなかで,中高齢者は若年成人と比較してIPS値が低いこと,特に安定域面積が狭いことが分かった(上條ら,2018).また若年成人では足趾屈曲最大筋力と足圧中心移動範囲が相関したが,中高齢者ではしないという結果が得られた.つまり中高齢者はバランス保持のために足趾を使用していない可能性が示唆された.今年度現在進行中の科研費研究課題の結果と合わせると,ある程度のバランス戦略を持ち合わせた状態でないと姿勢制御への足趾の寄与は少ないことが予想され,バランス能力を向上させるという本来の喫緊の問題に対してはより近位の関節に関する運動制御能力を調査しなければならないことが分かってきた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度の内容を継続し充実させ,足趾機能がバランス能力のどの部分に重要であるのかを明らかにする.また,バランス能力を高めるためには足趾運動のどのようなアプローチが有効であるかを提示できるように研究結果をまとめる.まとまったデータは論文化および発表につなげる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては国際学会での発表・参加を見送ったことが挙げられる. これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては,介入研究での被験者謝金として使用することと、論文執筆を積極的に行い費用を充てることを考えている。
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