本研究は、自立した地域高齢者の低栄養のリスク要因として、屋内外の客観的/主観的食環境・行動に着目し、社会的低栄養予防のための食環境・行動を評価する質問紙バッテリーを開発する。今年度は、自記式食料品アクセス尺度を開発し、地域在住高齢者に対する構成概念妥当性を検証した。 文献レビュー、当事者へのインタビュー、専門家の助言をもとに、42項目4件法の尺度原案を作成した。次に、首都圏の2政令市3地区の地域活動に参加する60歳以上の自立~要支援の住民を対象に、自記式質問紙による横断調査を実施した。探索的因子分析(最尤法、プロマックス回転)および確認的因子分析を用いて尺度の構成概念妥当性を検証した。また、基本属性および食品摂取多様性、栄養状態に対する基準関連妥当性を検証した。分析対象は303名(平均年齢73.4歳、女性217名)であった。探索的因子分析の結果、解釈可能な5因子23項目を抽出した。5つの下位因子は「買い物自立度」6項目、「買い物環境」5項目、「買い物交流」6項目、「買い物サポート」3項目、「食生活のゆとり」3項目となった。確認的因子分析によるモデル適合度は十分であった。各因子の内的整合性を示すCronbachのα係数は0.57~0.82であった。基準関連妥当性では、男性、独居、要支援以上、視覚障害、運動器リスク、1年以内の転倒経験、低栄養リスク、買い物頻度週2回以下、外食週1回未満の群で、有意に尺度合計点が低かった(p<0.05)。 「買い物自立度」、「買い物環境」、「買い物交流」、「買い物サポート」、「食生活のゆとり」の5因子23項目から構成される食料品アクセス尺度を開発し、都市部高齢者に対する構成概念妥当性と基準関連妥当性を確認した。本尺度を用いることにより、高齢者本人の食料品アクセスの状況を包括的に評価でき、個々人に適切な買い物や食の支援に活用できる可能性がある。
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