ジャンプ着地やカッティング動作といったスポーツパフォーマンス時の足の接地フォームを後足部接地(踵接地)から前足部接地(つま先接地)に修正することで、膝前十字靭帯損傷を予防できる可能性がある。そのため、つま先接地でのパフォーマンスが前十字靭帯損傷予防に対する効果を明らかにすることを本研究の目的とした。目的を達成するため、踵接地とつま先接地による接地フォームの違いが、膝前十字靱帯損傷のリスクファクターに与える影響を検討した。関東大学リーグに所属する学生アスリートを対象として180度ターン動作をつま先接地(FFS)と踵接地(RFS)の2種類の試技を実施させ、接地フォームと筋活動動態、関節角度の関連性について検討した結果、FFSはRFSと比較してACL損傷リスクの軽減に繋がる可能性が示された。 今年度は昨年度までの結果から前足部での着地動作を推奨するフォームの修正指導を行い、傷害発生の変化について検討を行った。傷害発生については、フォームの指導前のシーズンと指導後のシーズンを比較した場合、全体の傷害発生、部位ごとの傷害発生、外傷・障害の発生に大きな差を認めなかった。このことから、接地フォーム以外にも、疲労やトレーニング強度、相手との接触等多岐にわたる因子が傷害の発生に関わっていることが原因と考えられる。 今後は、ジャンプ着地やカッティング動作のフォームの指導に併せ、コンディションチェックやトレーニング負荷量の管理など、対象者のコンディションをより詳細に把握しつつ、傷害発生に関係する多くの因子を可能な限り排除しつつ、選手のパフォーマンス向上に役立てる研究が必要であると考える。
|