研究実績の概要 |
平成29年度は、研究代表者が提案したエージェントベースモデル[1]の拡張を行った。このモデルでは、各エージェント(以下プレイヤー)が自分の利得をある程度犠牲にし、相手の裏切り者に対して、その相手との利得の差に比例した確率で、犠牲と同等の罰を与えるという新たな罰の導入が、多様な相互依存関係の下で、協力者数とプレイヤーの平均利得を増加させることを示した。 具体的な拡張内容は、このモデルに、各プレイヤーの相手の裏切り者に対する寛容度と、各プレイヤーの意思によるプレイヤー同士の相互依存関係の動的変化という2つの要素を組み込んだことである。これらの要素については、既存研究[2]を参考にして、各プレイヤーをその戦略(裏切りまたは協力)と望まない相互依存関係を破棄する傾向において、異なる性格を持つように、M種類の異なるタイプに分類した。相互依存関係を破棄した場合は、各プレイヤーが固有の確率α_iで新しい相互依存関係を作るものとした。 当初は、平成29年度にモデルの拡張のみ行い、平成30年度に以上に述べた2つの要素が同時に起こる場合にもたらされる効果を調べる予定であったが、平成29年度の研究がかなり順調に進み、その効果について学術論文[3]として発表できた。 [1] Ohdaira, T. (2016), Sci. Rep. (Nature Publishing Group), vol.6, art. no. 25413.(学術論文・査読有り) [2] Van Segbroeck, S. et al. (2009), Phys. Rev. Lett., vol.102, Issue 5, 058105. [3] Ohdaira, T. (2017), Sci. Rep. (Nature Publishing Group), vol.7, art. no. 12448.(学術論文・査読有り)
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