研究実績の概要 |
令和元年度は、平成29年度に発表した先の学術論文[1]のモデルに報酬を導入すること、そして本務校の授業「情報スキルII」におけるアンケートにより得られた、学生のソーシャルメディア利用実態に基づき、学術論文[1]のモデルをより精緻化、大規模化することという2つのテーマのうち、主に前者の、先の学術論文[1]のモデルへの報酬の導入に取り組んだ。報酬がもたらす協力への効果について扱った既存研究は存在するが、いずれの既存研究も学術論文[1]のモデルで導入したプレイヤーの意思によるプレイヤー同士の相互依存関係の動的変化を考慮しておらず、それゆえこの要素と報酬が共存する際の影響について調べる必要がある。このテーマを遂行するにあたり、予想よりもモデルの定式化が困難であったため、まずはプレイヤーの意思によるプレイヤー同士の相互依存関係の動的変化の要素を排除し、プレイヤー同士の相互依存関係は静的、すなわち変化しない場合について、定式化を行ってモデルを作成し研究を進めた。その基本的な成果は国際会議[2]で発表し、現在学術誌への投稿のため論文を執筆中である。 並行して、平成30年度に入り急速に発展してきた、意思決定のコストが協力者数に及ぼす影響をテーマとする学術論文[3]の結果について幅広く周知するため、協力の進化に関する数理モデルを扱う研究者が多く集う日本数理生物学会年会のポスターセッション[4]において、その結果の要点を分かりやすく解説し、多数の研究者と有意義な議論を行うことができた。 [1] Ohdaira, T. (2017), Sci. Rep. (Nature Publishing Group), vol.7, art. no. 12448.(学術論文・査読有り) [2] Ohdaira, T. (2020), Proc. AROB 25th 2020, pp.16-19, 2020.(国際会議・査読有り) [3] Ohdaira, T. (2019), Sci. Rep. (Nature Publishing Group), vol.9, art. no. 4465.(学術論文・査読有り) [4] 大平哲史,2019年度日本数理生物学会年会,2019.
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