令和4年度は、3度の延長を行った本研究課題の最終年度に当たる。今年度の研究実績は、平成29年度に発表した学術論文のモデルに報酬を導入するというテーマの中で、より貧しいものに対して、より高い確率で報酬を与えるという、確率的報酬に関する研究を推進したことである。その結果、令和3年度のThe European Physical Journal Bにおける発表論文を発展させ、貧しい協力者のみならず貧しい裏切り者にも報酬を与えるという、普遍的な確率的報酬によっても協力が進化することが分かった。この結果は、すでに論文としてまとめており、今後学術誌へ投稿する予定である。 一方で、本研究課題開始時より研究代表者が提案してきた確率的ピア懲罰が、平成30年度に研究を行った意思決定のコストや、令和2年度から研究を進めてきた確率的報酬といった要素よりも、個人の合理的な選択が社会としての最適な選択に一致しない、社会的ジレンマの理論モデルの一つである空間囚人のジレンマゲームにおいて、協力進化の面で優位であることが明らかとなった。こうした理論モデルで得られた、確率的ピア懲罰の協力進化における優位性は、本務校の授業「情報スキルII」において実施したアンケートにより得られた、学生のソーシャルメディア利用実態に基づいてより精緻化、大規模化したモデルであっても、極めて多数の学生同士の結びつきの中から、真に影響のある結びつきを抽出することによって、理論モデルの場合と同様に示されるものと予測できる。 さらに、令和3年度の実績報告書において記した、確率的ピア懲罰の基本的なモデルを含む研究代表者のWebサイトについて、International Symposium on Artificial Life and Robotics (AROB)の参加時に周知し、研究の成果をより広く公開するように努めた。
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