本研究の目的は、途上国における森林減少・劣化防止を通じた温室効果ガス(GHG)削減政策であるREDD+政策に関し、社会面での課題、とりわけ社会的弱者である地域住民への配慮を規定するセーフガード要件に焦点を絞り、参加型森林管理(PFM)のREDD+適用を目指すタンザニアを事例とし、その制度設計の課題と方向性を明らかにすることである。当該年度は主に1.REDD+政策の国際交渉の進展や各国の動向に関する情報収集、2.タンザニアにおける海外調査、3.以上をベースにした学会での口頭発表ならびに論文の執筆・公表、を実施した。 1.交渉担当者や専門家などへの聞き取り調査や文献調査により、継続的に情報収集を行った。 2.2度のタンザニア調査については、特に以下の項目について調査を実施した。中央政府関係者:REDD+政策実施に向けた体制整備状況、PFMの課題やこれまでの経験・知見など/地方政府関係者:上記に加え、当該地の森林状況、PFM・REDD+事業実施状況など/地域住民(アルーシャ州などのPFM事業対象地):PFM事業に対する評価、森林減少状況・要因、REDD+事業のポテンシャルなど 3.第131回・日本森林学会では、「タンザニアのREDD+におけるセーフガードの制度設計の方向性」と題して口頭発表を行った(感染症拡大状況に鑑み、要旨の提出をもって口頭発表と認定)。また、「タンザニアのREDD-plus政策参加に向けた課題―外部からの支援及び国内政治状況に着目して―」と題して論文を執筆、『亜細亜大学・国際関係紀要』にて公表し、大統領の交代に伴う国内政治状況の変化がREDD+政策はおろかパリ協定への対応を遅らせるものとなっていることを明らかにした。 採択期間終了後も、議論の推移について注意しながら関係者への聞き取り調査やタンザニア現地調査を通じ、引き続き情報収集を行っていく。
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