本研究は,消滅の危機に瀕した言語(以下,危機言語)の再活性化運動を談話分析や会話分析を用いた相互行為的観点から検証するという目的を持ち,1970年代に開始したハワイ語ラジオ番組カ・レオ・ハワイ(以下,KLH)をデータとして文字起こし及び分析を進めてきた.KLHには第一期と第二期があり,1時間の番組が各400回程度放送され,デジタル化された番組は,ハワイ先住民コミュニティや教育機関において貴重な文化・教育資源として利用されている.しかし,リソースとして重視されているのは第一期の録音であることが多く,第二期は相対的に軽視されてきたといえる.そこで,本研究は特に1990年代に放送された,第二言語としてハワイ語を使用する出演者が大多数となった第二期を対象として,文字起こしと分析を進めている.2020年度は,コロナ禍により,現地訪問をする機会は失われたが,Zoomを介した発表の機会が多く設けられたため,これまでの研究成果の一部を複数の場で発表し,有益なフィードバックを得ることができた.例えば,9月には「第二言語としてのハワイ語とパート・ハワイアン」,10月には「『本当』のコードスイッチングとは?」という2件の発表を行った.口頭発表以外では,3月に,ラジオ番組KLHにおけるハワイ語の引用と構築された対話をテーマとする論考を投稿(査読中)している.また,同月には,ハワイ大学においてリモートで開催された言語記述と保存をテーマとする学会に出席し,ハワイ語の再活性化をめぐる現状を解説する複数のパネルを通して情報収集を行うことができた.
|