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本研究では拡散テンソル画像から得られるFA値を絶対評価として活用するための基準となる、任意のFA 値を不変的に維持できるファントムの開発を目的としている。先行研究によってミシン糸の束をガラス管に圧入することで均一なFA値が得られることが明らかになっており、本研究課題では使用する糸の材質や物理特性、作成手技についての検討と改良を行った。
ファントムに適したミシン糸はポリエステルフィラメント糸であった。これを任意の本数で束にしてガラス管に圧入することで安定したFA値を示し、また本数とFA値の間に高い相関を得ることができた。さらに合成繊維であるため経時的変化に強く、観察期間とした2年の間ではFA値に有意な変化は見られず、ファントムの外観にも異常な変化は見られなかった。ただし水の腐敗を防ぐために防腐剤（アジ化ナトリウム）の添加は必須であった。
作成手技については、糸束内に僅かでも気泡が残ると信号消失等の影響が表れたため、強力な超音波洗浄機等による一定時間以上の脱気操作が重要である。また、糸束のガラス管への圧入時にねじれが起こるとFA値の均一性に悪影響を与えることがわかった。
以上より本研究課題によって作成されたファントムは優れた不変性と再現性を持つことが明らかになった。
そして、当初の計画にはなかったが、ファントムの作成方法を変えることで拡散テンソルトラクトグラフィ（DTT）の評価に利用可能なファントムの開発を行った。これまでのファントムでは均一なFA値を得るために糸束をガラス管によって圧迫していたため変形させることができなかった。そこでガラス管の代わりにミシン糸を糸束にきつく巻き付けることでDTT可能な程度のFA値を示しつつ任意形状に変形させることができるファントムを開発した。
以上の成果について国内学会2件において報告を行った。
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