研究実績の概要 |
脳血流の低下は、脳血管疾患およびアルツハイマー型認知症のリスクになることが知られている。我々は、これまでに高体力者では安静時の脳血流量が高いことを報告している。一方、高齢者では心拍出量の低下が、低い脳血流と関連することが報告されている。また、我々は、心機図法を用いた左室収縮機能と脳血流量との間に有意な関連性があることを報告しており、脳血流の変化に心機能が関連している可能性がある。しかしながら、高齢者における左室心機能と脳血流量との関連は明らかにされていない。そこで、高齢者における左室心機能と脳血流量の関連を検討した。 心疾患および脳血管疾患のない地域高齢者32名(80±5歳、女性19名)を対象に、三次元心臓超音波診断装置(EPIQ7, Philips)用いて、拡張末期容量(EDV)、収縮末期容量(ESV)、1回拍出量(SV)、駆出率(EF)、長軸方向ストレイン(GLS)、円周方向ストレイン(GCS)およびツイストの評価を行った。また、左右の内頸動脈(ICA)および椎骨動脈(VA)の血流速度および血管径を超音波診断装置(vivid i, GE)にて測定し、血流量(血流速度×血管横断面積)を算出した。左右のICAおよびVA血流量の合計を総脳血流量とした。その結果、EDV、ESV、SV、EF、GCSおよびツイストと総脳血流量との間に関係は認められなかった。一方、GLSは総脳血流量と有意な関係が認められた(R=0.481、P<0.021)。以上の結果から、GLSは左室心機能指標の中でも脳血流量と関係することが示唆された。本研究は、第75回日本体力医学会大会および25th Annual Congress of European College of Sports Scienceにて発表を行った。
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