研究課題
本研究は最新の3次元心臓超音波法を用いて、「心臓収縮・拡張機能は高齢者の脳血流量低下に関与するか」および「認知症発症に関連する心機能因子の探索」の2つの研究課題から、「心機能低下による脳血流量低下が認知症発症リスクを高める」という仮説を検証してきた。3次元心臓超音波検査では、2次元画像に奥行きの情報を加えて、心臓の全体像を捉えることが可能になる。心臓収縮機能の指標である、左室駆出率が正常であっても、心筋の壁運動(ストレイン)が低下している場合があり、ストレインを用いた収縮機能の評価は、これまでの評価では明らかにできなかった、収縮機能の低下を評価できる可能性がある。そこで、本研究では、2次元での左室収縮・拡張機能に加えて、長軸および円周方向での心筋壁収縮運動(ストレイン)と脳血流量との関係を検討した。心疾患および脳血管疾患のない地域高齢者32名(80±5歳、女性19名)を対象に、三次元心臓超音波診断装置(EPIQ7, Philips)用いて、拡張末期容量(EDV)、収縮末期容量(ESV)、1回拍出量(SV)、駆出率(EF)、長軸方向ストレイン(GLS)、円周方向ストレイン(GCS)およびツイストの評価を行った。また、左右の内頸動脈(ICA)および椎骨動脈(VA)の血流速度および血管径を超音波診断装置(vivid i, GE)にて測定し、血流量(血流速度×血管横断面積)を算出した。左右のICAおよびVA血流量の合計を総脳血流量とした。その結果、EDV、ESV、SV、EF、GCSおよびツイストと総脳血流量との間に関係は認められなかった。一方、GLSは総脳血流量と有意な関係が認められた(R=0.481、P<0.021)。以上の結果から、GLSは左室心機能指標の中でも脳血流量と関係することが示唆された。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
Journal of Clinical Monitoring and Computing
巻: - ページ: -
10.1007/s10877-022-00817-1
Exercise and Sport Sciences Reviews
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