研究課題/領域番号 |
17K18090
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木村 太郎 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 助教 (90760794)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲージ理論 / 共形場理論 / W代数 / 可積分系 / 超弦理論 / 小弦理論 / 箙多様体 / ゲージ折紙 |
研究実績の概要 |
本研究課題の初年度である本年度は我々の提案する箙W代数の基礎的な性質の解明に向けた研究に重点を置き,いくつかの重要な結果が得られた.まず箙の代数的性質を統一的に理解するために non-simply-laced 型の代数を一般に含んだ分化箙 (fractional quiver) とそれに付随した分化箙ゲージ理論の構成を行なった.この構成法は箙ゲージ理論とW代数との双方向的な対応である箙W代数に基づくものであり,特に non-simply-laced 型 W 代数の q 類似を自然に再現するものである.また有限型でないアフィン型・双曲型で,かつ non-simply-laced な箙も構成が可能になり,これによって任意の箙に対するゲージ理論的な取り扱いが可能となった.
この分化箙に関連していくつかの関連の結果も得ている.箙ゲージ理論の超対称真空に対するモジュライ空間は代数的古典可積分系の相空間と同一視されるが,ゲージ理論側で同変変形と呼ばれる自然な変形が可積分系側での量子変形になることが知られている (Nekrasov-Shatashvili対応).このとき同変変形は2種あるパラメータのうち1つを用いるが,分化箙ゲージ理論の場合にはこの2種のパラメータは対等でなく,つまり量子化の際に2つの可能性があることに対応している.我々はこの2つ現れる量子可積分系に対して転送行列やベーテ仮設方程式を導出し,その関係性を明らかにした.
その他,分化箙の幾何学的な理解に向けた研究を行った.この時,ゲージ理論の定義される4次元ではなく,ゲージ折紙と呼ばれる高次元理論からスタートすることでその統一的な記述が可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は箙W代数と関連のテーマについて基礎的な結果を複数得ることができた.一方で出版論文自体はあまり件数は多くないが,これは特に初年度であり今後の研究の萌芽となるようなアイデアを育てることに注力したことがその1つの理由である.実際に国内外の複数の研究者と様々なアイデアについて継続的に議論を行なっており,今後の発展の見込まれる結果も現れつつある.
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今後の研究の推進方策 |
現在進行形で進めている共同研究者との複数のプロジェクトを継続し,具体的な成果をあげて行くことを目指す.またこれまでに議論されていない新しい方向性についてのプロジェクトの立ち上げも目指し,これまでとは異なる分野の国内外の研究集会などでも積極的に成果を公表する.従来より議論を継続している共同研究者との交流も引き続き積極的に行い,例えば長期的な滞在,および招聘を行う予定である.
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