研究課題/領域番号 |
17K18091
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
墨谷 暢子 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 助教 (80534601)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞周期 / 葉緑体分裂 / 灰色藻 |
研究実績の概要 |
葉緑体は細胞内共生により誕生したとされる。共生の過程では共生体であるシアノバクテリアと宿主細胞の分裂の協調が必要となる。これまでに1細胞に1葉緑体 をもつ単細胞藻を用いた解析により、1)葉緑体の分裂開始は葉緑体分裂遺伝子の転写によって制御されること、2)葉緑体が分裂を開始しない限り細胞周期進行はM期前期にて抑止されるというメカニズムが存在することが明らかとなっている。本研究では、特に2)に関して、細胞周期がM期前期で抑止されるメカニズムの分子機構の解明と、この現象の藻類における普遍性について明らかにすることを目的としている。 本年度は、これらの機構が1細胞に複数の葉緑体をもつ単細胞藻でも保存されているかを1細胞あたり2-4つの葉緑体をもつ灰色藻のCyanophora sudaeを用いて調べた。C. sudaeをS期でarrestすると細胞あたりの葉緑体の数が増加したことからS期特異的な葉緑体分裂装置の形成がC. sudaeにも存在することが示唆された。葉緑体の分裂を阻害すると葉緑体が1つしかないのにもかかわらず核を2つもつ細胞が出現したことから、C. sudaeは葉緑体分裂の進行を確認せずに細胞周期が進行しうることがわかった。以上のことは細胞分裂と葉緑体分裂の協調機構のうち葉緑体分裂開始が細胞分裂の進行を許可する機構については、真核藻類が葉緑体を獲得してまもない時期に確立したが、必ずしも全ての単細胞藻に備わっているわけではないことを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、葉緑体分裂開始による細胞周期のチェックポイントの解除機構の分子機構解析を解析するために使う単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeの形質転換体株が用意できるまでの間に並行して他の藻類を用いた普遍性の解析を予定していたが、予定通り、灰色藻Cyanophora sudaeを用いた解析が進んだことから計画どおり研究が進んだと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
葉緑体分裂開始による細胞周期のチェックポイントの解除機構の分子機構について単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeを材料とし、G2―M期移行の制御を担うCyclin BとCDKBに着目して明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めるにあたって当初予定していなかった、外部解析受託会社を利用する必要が生じたが、解析の依頼から結果納品まで時間がかかり年度をまたぐこととなった。次年度使用額はこの外部解析受託用であり、次年度早々に使用する予定である。
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