本研究では、重大な社会問題である慢性疼痛に対し、神経成長因子(NGF)に着目して新規鎮痛標的の同定を試みた。このNGF変異によって起こる、骨関節の痛覚が特異的に欠如する先天性無痛無汗症V型という疾患に着目し、この疾患のモデルマウスを確立し解析を進めたところ、骨関節の炎症時際に特異的な痛みの欠如が見られた。一方、このNGF変異マウスの唾液腺を調べたところ、NGFは正常に分泌され、組織解析でも神経系の発達も正常であった。さらにこのNGF変異マウスでは炎症時の骨破壊が著しく軽減されることから、このNGF変異が引き起こすシグナリングの変化は骨保護作用のある有力な新規鎮痛標的になりうることが示された。
|