研究実績の概要 |
現在の日本では早産低出生体重で出生する児が全出生の約10%を占めている。我々は、超低出生体重児において、腎臓の毛細血管密度が減少し高エリスロポエチン性多血症が生じることを報告した(Asada N et al. Polycythemia, capillary rarefaction, and focal glomerulosclerosis in two adolescents born extremely low birth weight and premature. Pediatr Nephrol 2017)。超低出生体重児では、胎盤機能不全による胎児低栄養や低酸素、出生に伴う発生途中での酸素濃度上昇、出生後の急性腎障害や様々な薬剤(腎毒性を有する抗菌薬や糖質コルチコイド)に暴露されている。研究代表者はこれらの中に腎臓の毛細血管発達を障害する要因が存在するのではないかと考え、モデル動物作成し病態解明を目指した。 胎盤機能不全における胎児低酸素を模倣するため妊娠マウスの低酸素飼育を実施したが、マウス仔の血管密度変化は小児期も成熟した時点でも認められなかった。胎児低栄養モデルおよび出生後の高酸素負荷モデルを作成したところ、生後7~14日目において両モデル共に腎血管密度低下を認めた。しかし、成熟マウスに成長してから改めて評価したところ、毛細血管密度はコントロール群と同等にまで回復していることが明らかになった。 以上から、我々の報告したような病態を呈する超低出生体重児では、さらに強力な負荷が加わっていると考えられた。今後、さらに条件検討を行い超低出生体重児の病態を生じさせる要因を明らかにしていく。
|