研究課題/領域番号 |
17K18098
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
磯 由樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00769705)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛍光体 / ナノ粒子 / ゼオライト / Agクラスター / 波長変換 |
研究実績の概要 |
太陽電池は太陽光に含まれる近紫外光を発電に有効利用できない。そのため、蛍光体を用いて近紫外光を発電に有効利用できる可視光に変換し太陽電池の性能を改善できると考えられる。本研究では近紫外光を可視光に変換するAgゼオライト蛍光ナノ粒子に着目し、その合成および蛍光特性の改善を検討した。 水熱法で合成した粒子は粉末X線回折法によりFAU型ゼオライトに同定された。また、透過型電子顕微鏡による観察から平均粒子径は35.7 nmであった。このゼオライトナノ粒子を硝酸銀水溶液に加えて撹拌することでゼオライト内のNa+とAg+をイオン交換した。得られた試料は白色であり、近紫外光照射下で可視蛍光を示した。この試料の特性を評価すると、X線回折法ではFAU型ゼオライトのみが検出され、金属の銀や酸化銀などといった副生成物は見られなかった。一方、蛍光X線法での元素分析によるAgの検出や、蛍光を示したことから、蛍光性Agクラスターを担持したFAU型ゼオライトナノ粒子であることを確認した。内部蛍光量子効率は5.9%であった。試料にPdの特性X線を照射すると、蛍光強度が最大で約3倍にまで増大した。また、内部蛍光量子効率では17.8%まで改善した。一方、試料の色は白色のままであり、可視域の吸収スペクトルに顕著な変化は見られなかった。蛍光寿命の測定や電子スピン共鳴法での分析などにより、ゼオライト内のAg+イオンから生成したAg4(2+)クラスターが蛍光を示しており、X線照射によりその生成が促進されたため蛍光特性が改善したと結論付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りFAU型Agゼオライトナノ粒子を作製して蛍光特性の改善を検討し、X線照射によって蛍光強度が最大で約3倍にまで増大した。この成果は投稿論文としてまとめ、学術英文誌に掲載された。したがっておおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
Agゼオライト蛍光ナノ粒子を利用して透明な波長変換膜の作製を目指す。作製した膜が太陽電池の特性を改善するために十分な特性を有していると判断された場合、市販の太陽電池に実装して短絡電流や光電変換効率に与える影響を評価する。
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