当該研究の目的は、現代資本主義社会に対抗するためのアソシエーションの1つとして世界的に注目され着実に成果を出し始めている労働者協同組合(以下、労協)を研究対象とし、「階級的見方」「アソシエーション研究」そして「経営学(特に協同組合ガバナンス)」の観点から、アメリカの労協の機能を分析し、日本の労協にとって必要な機能とガバナンスを提示することにあった。 最終年度は、昨年度までに実施した実証研究を踏まえてさらに理論的研究を深め、日本の労協の研究所が発行する月刊『協同の發見』誌でアメリカの労協法について紹介したり、日本の中小企業組合の連合組織の研究事業で労協に関する情報提供と報告書の執筆を行ったり、『現代経営学の基本問題』では本研究を反映させる形で労協の内容を踏まえた論文を公表できた。 今年度の研究成果および過年度の研究成果(研究期間全体)を通じて、日本の労協が現代資本主義社会に対抗していくためには、①事業性と民主的な組織づくりを両立させるような強い組織づくりによる対抗戦略、②政府・行政に依存しすぎない資金調達の確立、③社会的に弱い立場に置かれている人の組織化による対抗戦略、④教育を通じた対抗戦略、⑤資本主義とは異なる経済システムを構成しようとする他の主体との共闘、という5つの機能とガバナンスが必要であるということを明らかにすることができた。 新型コロナ等の影響もあって当初予定していたイギリスでのインタビュー調査はできなかったものの、アメリカにおけるインタビュー調査結果を踏まえて、日本の労協にとって必要な機能やガバナンスに関する一定程度の研究成果を提示できたことは、協同組合研究にとっても経営学にとっても研究意義があるものと考えられる。また、日本でも労協法が成立した今、アメリカの実践について情報提供してきた本研究は、労協の現場においても重要なものになるといえるだろう。
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