• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

一般確率論に基づく情報理論の構築と量子力学の原理的特徴付けへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 17K18107
研究機関芝浦工業大学

研究代表者

木村 元  芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (80517011)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード一般確率論 / 情報理論 / 量子力学の原理
研究実績の概要

本研究は,一般確率論に基づく量子情報理論の一般化,並びに量子力学の原理的特徴づけを目指すものである.特に量子論を特徴づける物理原理(実験検証可能な法則)の完成は,量子基礎論の悲願の1つでもある.

当年度は,特に量子力学の物理原理の追求として,主に一般確率論における情報対称性に着目して研究を進めた.情報対称性は2019年Banikらにより導入され,量子暗号などで重要となる最適な状態識別に関する量子論や古典論で成り立つ対称性に着目した原理である.本研究では,Banikらの定義に最適測定に関する非一意性に基づく曖昧性を指摘し,弱情報対称性と強情報対称性を導入し,多くの一般確率モデルが弱対称性によって排除されないこと,また,強情報対称性を量子論が満たすことを示し,情報対称性の物理原理としての整備を行った.加えて,状態識別問題の幾何学的なアプローチとして,以前に研究代表者らが考案したヘルムホルツ・アンサンブルの方法があるが,情報対称性の可否をヘルムホルツ・アンサンブルを用いて検証する方法を開発した.これらは現在投稿準備中である.また,以前に開発した誘導エントロピー法に基づく各種エントロピー間の関連性を調査しており,測定エントロピーと情報エントロピーが,正六角形モデルにおいて誘導法で結ばれる兆候を得ている(少なくとも数値的には一致).これは,既に得られている正四角形モデルにおける結果の一般化に相当し,現在厳密な証明を試みている.

その他にも,引き続き一般確率論の情報理論の構築を,状態空間幾何との関連性から検討中である.特に,非自明な合成系上の相関(エンタングルメント)や測定の整備を行っている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究は一般確率論に基づく量子論の原理追究並びに情報理論の構築を目指すものであ.当初の目標としては,複合系(相関)の理論整備を行い,漸近論に基づく操作主義的に意味のある各種情報量の導入,また,情報源符号化や通信路符号化への応用を行うことを目指していたが,特に複合系の状態空間や測定の構造が,主にテンソル積構造の非一意性によって想像以上に困難であることがわかった.

今後の研究の推進方策

引き続き,複合系の一般確率理論の理論整備を模索する.特に,未解決問題であった非古典理論の複合系には必ずエンタングルメントが存在することが証明されたため,これを利用してエンタングルメントの研究を進めたいと考えている.また,ある程度柔軟に研究を関連する方向で達成可能なテーマも追及し,例えば誘導エントロピー法の発展や情報因果律や情報対称性といった物理原理の追求も行いたい.

次年度使用額が生じた理由

研究が想定以上に遅れたことに加え,一番の理由はコロナ禍によって計画していた国際出張がすべてキャンセルになったことによる.今年度はコロナ禍の状況が改善されれば国際出張で成果発表を計画しているが,状況は芳しくない(また,既にオンライン会議に変わった国際会議もある)ため,計算機の充実に加えて,情報収集のセミナーや会議の企画を積極的に行う予定である.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 その他

すべて 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 情報対称性の原理は量子論を特徴づけられるか?2021

    • 著者名/発表者名
      永石健人, 木村元
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会(2021)
  • [学会発表] 測定非独立性を考慮したBell-CHSH不等式の一般化2021

    • 著者名/発表者名
      鱸優吾, 木村元
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会(2021)
  • [備考] 一般確率論における情報蓄積量と状態空間(点)対称性の関係

    • URL

      https://arxiv.org/abs/1802.01162

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi