慢性疼痛性疾患において侵害刺激の受容に関与するtransient receptor potential vanilloid 1(TRPV1)の発現量が感覚神経の細胞膜上で上昇した場合を想定し、EGFP-TRPV1を様々なレベルで安定発現するPC12 cell lineを使用して実験を行った。これまでの研究により、TRPV1高発現細胞株とTRPV1低発現細胞株をアゴニスト刺激した際には、活性酸素種が発生し、アポトーシスが誘導されることが明らかとなっている。本年度は、アポトーシス誘導の際に誘導されるMAPキナーゼ、特にc-Jun N-terminal kinase(JNK)のリン酸化の上流および下流に存在するシグナル伝達経路につき解析を行った。 活性酸素種発生後に生じるTRPV1高発現細胞株のアポトーシスは、pan-caspase inhibitorであるZ-VAD-FMKの投与により抑制される。本研究により、リン酸化されたJNKの下流においてcaspase-2が活性化されている可能性が考えられた。 また、実験動物を用いて、三叉神経支配領域に対する刺激を行った際に、細胞体の多くが存在する三叉神経節において、種々のストレスに迅速に応答する転写因子Activating transcription factor 3(ATF3)や、神経細胞の興奮性を示すc-Fosが発現することが明らかとなった。それらの転写因子やタンパク質の発現は、疼痛行動に関連する可能性が示唆された。
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