研究課題
初年度は、抗体の「安定性」と「柔軟性」に着目して研究を推進した。手法としては、「分子シミュレーション」「pebble game解析」「物理化学測定」を用いた。また、設計した抗体の抗原候補となるウイルスが持つ蛋白質について、「系統樹解析」と「X線結晶構造解析」を行った。以下の5つの成果を得た。(1)コンピュータを用いた設計によって、13000以上の変異体を含む、バーチャルリブラリを作成した。その中に、熱安定性が向上している変異体が存在することを実験的に確認した。(2)それらの抗体は凝集性も改善されていたうえに、懸念していた親和性への影響も回避できていた。(3)熱安定な抗体と不安定な抗体のアミノ酸配列を比較することで、熱安定性向上のための変異を同定し、分子シミュレーションを用いることで、その安定化要因を明らかにすることができた。(4)コンピュータを用いて、大規模な抗体CDR-H3領域の柔軟性の評価を行なった。親和性成熟前後で、立体構造の柔軟性の変化が常に伴うとは限らないことを明らかにした。(5)麻疹ウイルス膜融合蛋白質の立体構造を解明した。ウイルス膜融合蛋白質と阻害剤が結合した状態を原子レベルの分解能で可視化することに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
コンピュータ上で13,000を超える変異体を作成することができた。スコア上位10個の抗体の熱安定性を実際に測定したところ、その半数近くで、設計通りに、変性温度の上昇が見られた。コンピュータを用いた分子設計により、抗体の安定性の向上が可能であることを示すことができた。また、大規模な抗体CDR-H3領域の柔軟性の評価を行うことで、親和性成熟前後での熱力学パラメータ変化に関する知見を得ることができた。
(1)ターゲットとする抗体を追加する(2)設計した抗体のX線結晶構造解析を実施する。(3)より予測精度を上げるため、機械学習を取り入れたスクリーニング手法の開発に取り組む。(4)添加剤を加えた時の抗体の物性への影響も解析する。(5)抗体の親和性の設計も視野に入れる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Journal of Biochemistry
巻: in press ページ: -
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