研究課題
概ね研究計画通りに本研究を遂行することができた。最終年度はデータ入力・解析要員を増員させて対応し、基礎的な知見についても検証することができた。骨粗鬆症患者において、抗RANKLモノクローナル抗体投与時の骨代謝マーカーは投与後に発生する低Ca血症と有意に関係することが明らかとなった。ROC曲線よりCutoff値を求め、低Ca血症のリスクを検討したところ、P1NP76.5ug/L以上の時、低Ca血症を発生するORは8.242倍であり、その他の要因(投与時血清Ca値・eGFR)で補正しても10.6倍のリスクが確認された。同様の傾向はその他のマーカーでも認めていた。骨転移に対しても計画通りに検討を行った。原発性腫瘍の治療そのものが目覚ましい進歩と認め、骨修飾薬を使った骨転移のマネージメントもとても重要になってきている。本研究では、抗RANKLモノクローナル抗体投与後の低Ca血症の発生を抑えるため、活性型VitD製剤(ALF1.0ug)とCa製剤600mgの併用で十分な補充療法を行ったのち、治療を行った。しかし、それにも関わらず、低Ca血症はCTCAE Grade1以上の低Ca血症を23.8%に認めた。CTCAE GradeのGrade別評価では、Grade1の低Ca血症が21.4%であった一方で、症状を呈するようなGrade2の低Ca血症は2.4%であり重篤な合併症はほぼ予防できていた。したがって、本研究における補充療法は一定の効果と安全性を担保できたものと考えている。これまで、骨修飾薬投与後の低Ca血症発生に関わるリスク因子は、腎機能障害や補充療法が十分に行われていない患者と言われてきた。しかし、本研究ではそのような患者は組み込まれていない。それにも関わらず、低Ca血症を認める患者が一定数確認され、投与時の骨代謝マーカー高値の患者は低Ca血症の発生に注意するべきことが判明した。新しい知見を含んだ本研究結果は今後の臨床においても有用に活用されると思われる。
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