『二兎を追う者は一兎をも得ず』と古くからのことわざで言われるように、2つの獲物(報酬)を同時に得ようとして結局どちらも獲得することができない、ということは誰しも経験があることであろう。このような現象は報酬に関係するものに注意を集中させようとする選択的注意の機能と、一度に複数のことを行うために注意を配分する分割的注意の機能が競合することによって引き起こされると考えられる。本研究では、この選択的注意と分割的注意の競合が記憶に与える影響とその脳内メカニズムをアイトラッカーとfunctional Magnetic Resonance Imaging (fMRI)を用いて検討する。 令和4年度は、金銭報酬による選択的注意と分割的注意の競合についての研究を進めると共に、問題ギャンブラーのギャンブル課題中の注意についての研究と、パーキンソン病患者を対象にした内発的動機付けについての研究を進めた。全ての研究について、データ解析が完了し、得られた成果を論文としてまとめているところである。選択的注意と分割的注意の競合についての研究の成果は、11th International Brain Research Organization (IBRO) World Congressで発表するために演題登録を行い、ポスター発表での採択が決まっている。今後は国際誌への掲載に向けて論文の執筆を行う。問題ギャンブラーを対象としたギャンブル課題中の注意の研究の成果は、国際的な学術誌への投稿に向け、論文の修正を行っているところである。パーキンソン病患者を対象とした内発的動機付けの研究の成果は、論文としてまとめられ、神経心理学分野の権威ある学術誌に掲載された。
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