研究課題/領域番号 |
17K18118
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
工藤 芽衣 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (70433878)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ロベール・マルジョラン / 新自由主義 / 欧州統合 / 通貨協力 / EEC |
研究実績の概要 |
平成30年度は、マルジョランによる1958年の通貨協力構想を中心に、一次史料に依拠して実証していくことを予定していた。マルジョランは、フランスがEECに加盟することで伝統的な保護主義に決別し、自由貿易近代化の道を本格的に歩むことを望んだ。一方で、EEC加盟直後はローマ条約を利用して、フランスの国際収支危機救済の道を探るが失敗し、また、その後は厳格なインフレ抑制が求められる通貨協力の提案を行った。この二つ提案の失敗は、60年代のマルジョランが「パラレリズム」を展開していくとへと結実していく。この過程について、まず先行研究と資料集を行い、分析を行った。また、マルジョランの思想・政策形成に影響を与えた新自由主義者やケインズ主義者などについても分析を進めた。 史料収集は、事前に収集した先行研究を元に、訪問先史料館で閲覧すべき史料をリストアップし、フランス銀行、フランス国立公文書館(パリ郊外)、フランス国立公文書館(ルーべ)、フランス外務省史料館、ジャン・モネ財団において一次史料収集を行った。フランス国内の各史料館においては、EEC委員会参加後のマルジョランによる通貨協力構想、ヨーロッパ諸国間での経済調整、国際収支危機とフラン切り下げ問題、などについての史料を閲覧した。ジャン・モネ財団は、マルジョランに関する一次資料を体系的に保存しており、戦前から戦後までのマルジョランの活動に関連した史料を閲覧することができるが、今回は、戦前から戦後のマルジョランの思想の変化を知るために、戦前の活動、モネプランへの関与、OEECでの活動、EEC委員会に参加する前の活動、EEC委員会においての活動の一部、マルジョランの交流関係についての史料を閲覧することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、概ね計画通りに進んでいる。ただし、研究成果の発表はタイミングの問題もあり、やや遅れがちであるため、2019年(令和元年)は、成果発表についてもう少し速度を上げる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度(令和元年)は、60年代初頭、「第二段階の行動計画」の中でマルジョランが提示した、ヨーロッパ諸国間の通貨協力構想と、同じく彼が提示したヨーロッパ五カ年計画の問題について考察する予定である。通貨協力を進めるためには、インフレ抑制や財政支出抑制などの通貨面での「新自由主義」的政策が要求される。一方、ヨーロッパの介入主義的五カ年計画の方は、フランスのディリジズムをヨーロッパに適用するものであるため、先行研究では「介入主義的」として理解されてきた。このように、60年代初頭から半ばにかけてのマルジョランの二つの相反する側面について説明している先行研究は、管見の限りはない。しかし、これまでの研究の過程から、申請者は対立的な政策を同時に追求するこの「パラレリズム」こそが、マルジョランの本当の目的を明らかにするのではないかと考える。なぜならば、政策決定に実際に携わった実務家としての顔を持ち、かつ「イデオロギー」にとらわれることを忌み嫌ったマルジョランは、「ケインズ主義」「新自由主義」という「主義」に固執することよりも、いかにして自由主義経済と社会的安定を両立させるかに常に考えていたからである。以上を課題とし、年度内に史料収集を行い、論文や口頭発表を通じて成果発表を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた日数よりも短期間で史料収集を行ったため。次年度使用分は、2019年度の史料収集費用に充てる予定である。
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