コーカサス地方は、西アジアと南ヨーロッパの接点に位置し、古来より東西交易の重要な要衝として機能し、さまざまな文化が交錯すると同時に独特の文化が形成されてきた。ジョージアは西アジアの北端にあることから古い歴史があり、膨大な数の金属資料が発掘されている。そこで、古代ジョージアにおける銅合金の利用と使用された材料の流通を明らかにするために、2014年よりジョージア国立博物館と共同で、初期青銅器時代から鉄器時代までの銅合金製資料の科学的調査を実施している。 その結果、検出された銅合金の種類は、砒素銅、青銅、銅-錫-砒素合金、銅―アンチモン合金、真鍮であり、砒素銅は初期鉄器時代にいたるまで使用され続けたことが明らかとなった。また、器種によって異なった合金設計が行われている。鉛同位体比によって当該地域周辺の銅鉱石が使用されており、鉛の含有量の違いも併せ、①初期青銅器時代の砒素銅製資料、②中期青銅器時代以降の青銅製以外の資料、③中期青銅器時代以降の青銅製資料の3つに分類できる。②ではインゴットや生産遺跡が見つかっており、現地生産であると考えられる。一方で現地では産出しない錫を使用した③は使用した銅鉱石の産地が異なることから、青銅素材を輸入した可能性と製品を輸入していた可能性が考えられる。 今後は測定資料数を増やすとともに、在地の鉱石の鉛同位体比と比較検討してく予定である。これにより青銅の起源地や錫の輸入元を検討していく。
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