研究課題
本研究課題において16員環マクロライド系薬剤・ジョサマイシンによる抗インフルエンザウイルス活性の作用機序を解析し、また、同じマクロライド系薬に属し、15員環構造をとるアジスロマイシンについても、ジョサマイシンのそれと比較検討を行った。ジョサマイシンは宿主細胞に感染し細胞外へ出芽する娘ウイルスの感染力価を著しく減少させる抗ウイルス活性をもつが、1)感染時の親ウイルスの感染効率に影響を与ええていないこと、2)感染してから出芽直前までの宿主細胞内におけるウイルスRNAの転写発現、ウイルスタンパク質の翻訳レベルに影響を与えていないことを明確にした。A型インフルエンザウイルスは、感染8~10時間後に宿主細胞から大量の娘ウイルスを産生するが、ジョサマイシンの投与で、出芽時期の周辺で娘ウイルスのRNAコピー数が減少していたことなどから、出芽の前後で作用していることを示した。ジョサマイシンによる抗インフルエンザウイルス作用機序について、研究計画に沿って進められた実験のデータから、上記1)と2)の抗ウイルス作用メカニズムを否定し、かつ、抗ウイルス作用メカニズムの作用点は、感染後半の出芽のタイミングに絞ることができた。一方で、アジスロマイシンについての抗ウイルス活性機序は、ジョサマイシンのそれとは大きく異なり、このマクロライドはウイルス粒子に直接作用し影響を与えることで、親ウイルスの宿主細胞内へのエンドサイトーシスを抑制していることを明らかにした。今後の研究の展開として、親ウイルスが宿主細胞に感染し娘ウイルスが出芽する時期に、ジョサマイシンがウイルス分子に対して直接的に作用するという可能性と、宿主細胞に本来備わっている機能に影響を与えることによって娘ウイルスの増殖を抑えている可能性を考えながら、研究を続行する必要があると考えている。
すべて 2019 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
Journal of Antibiotics
巻: 10 ページ: 759-768
10.1038/s41429-019-0204-x
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