研究課題/領域番号 |
17K18124
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
森屋 宏美 東海大学, 健康科学部, 講師 (80631845)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝看護 / 外来看護 / がん看護 / 尺度開発 / 看護実践能力 |
研究実績の概要 |
本研究は、遺伝看護実践能力に関する自己評価尺度の作成を目的とする。本年度は尺度項目作成に際し、インタビューと文献検討により、外来看護者のがん遺伝/ゲノム看護実践について最新の知見を得た。 インタビューでは、2018年2月、遺伝看護専門看護師(以下、GCNS)が所属する施設において、がん関連診療科外来の看護師5名に対し、家族性腫瘍患者への看護実践について尋ねた。これにより、がん遺伝/ゲノム看護実践として以下の7項目:家族性腫瘍患者に対する診断から終末期までの長期に渡る生活支援をすること。親が子の将来を心配する様子に寄り添い思考を整理するよう関わること。患者が問診票を記載する際には、家族歴に記載漏れがないか確認するなど、家系成員の疾患に関する正確な情報収集に努めること。患者が外来から病棟へ移行する際には、遺伝相談ができる窓口として病棟に所属するGCNSを紹介し、患者が望むタイミングで遺伝問題に対する支援がはじめられるよう橋渡しをすること。遺伝子医療部門の受診後は、患者を通して診療内容を把握することにより、継続支援に努めようとすること。社会の要請に従い遺伝リテラシーを高めることが抽出された。 文献検討では、「がん遺伝/ゲノム看護」について概念分析を試みた。医学中央雑誌(医中誌WEB版:1965~2018年)にてキーワード検索したところ、関連文献として897件が抽出された。このうち重複する文献を除く369件の論文についてタイトルから看護実践に関わりのない文献を除外した。現在は68件について、入手可能であったものから分析をはじめている。今後は、これらにより作成したアイテムプールより尺度項目を精選したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、尺度項目の検討を行うことを目標としたため、概ね順調に進展していると評価をした。 この進捗過程について、はじめに、国内の外来における遺伝看護実践について複数の研究者とともに検討を行った。この過程において、遺伝看護実践は、ゲノム解析技術が医療にも応用されるようになっていることから、遺伝/ゲノム看護実践として扱うことが望ましいとの見解が得られた。また、遺伝/ゲノム看護実践は、ゲノム/遺伝子の構造や機能に関わる看護、単一遺伝子疾患に関わる看護、多因子疾患に関わる看護、発生や先天異常に関わる看護、体細胞変異によるがんに関わる看護、遺伝性・家族性腫瘍に関わる看護、薬理遺伝学に関わる看護、遺伝学的検査に関わる看護、先天代謝異常・新生児マススクリーニングに関わる看護、集団遺伝学に関わる看護が主であることが分かった。これらの看護実践の特性の違いを考慮し、本研究では「がん遺伝/ゲノム看護」について焦点化した上で研究を進めることとした。 現在は、インタビューおよび文献検討により尺度項目の精選を進める段階にある。次年度以降、尺度項目を決定した上で、がん遺伝/ゲノム看護実践能力に関する自己評価尺度の作成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アイテムプールが整った時点で研究者会議を開き、汎用性の高い尺度となるよう尺度項目の精選を目指す。 その後、平成30年度下半期から平成31年度にかけ、本尺度に関する無記名自記式調査を行う。調査対象施設は、地域別・病院種別の病院表(厚生労働省作成最新版)及び小児がん拠点病院等一覧表(厚生労働省作成最新版)から層化無作為抽出法を用いて抽出する予定である。分析は、主に以下の方法により実施予定である。すなわち、項目ごとに平均と標準偏差を算出し、天井・床効果について検討し、Item-Total相関の確認を行う。尺度項目の一貫性を確認し、探索的因子分析(主因子法・バリマックス回転またはプロマックス回転)にて構造を明らかとする。安定性の検証のために、間隔を空けて尺度案に対する調査を複数回実施し、下位尺度得点ごとにPearsonの積率相関係数を算出する。内的整合性の検証では、各尺度のCronbach α係数を評価する。最後に構成概念妥当性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では、平成29年度人件費は350,000円であった。これに対し、実際の人件費はこれを下回っている。この差額が生じた理由として、学内の人事計画により、当初予定より雇用期間が短縮したことがある。しかし平成29年度に収集したデータが膨大になってきたことから、次年度は本年度以上の研究事務を要することが想定され、平成30年5月より雇用時間を増やす予定となっている。このため、人件費の次年度繰り越しが必要となる。
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