研究課題/領域番号 |
17K18133
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
下島 圭子 東京女子医科大学, 医学部, 特任助教 (30578935)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 疾患iPS細胞 / シナプス / 活動電位 / Caイメージング |
研究実績の概要 |
申請者らは、これまで神経発達障害患者のゲノム診断に多く関わってきた経験から、シナプス関連遺伝子領域のゲノムコピー数変化や、シナプス関連遺伝子の機能を喪失させる新生突然変異が多くの患者において、発症要因となっていることを明らかにしてきた。それら、疾患の原因となるゲノム変異が明らかになった患者から疾患iPS細胞を樹立し、神経系細胞、特にニューロンに分化誘導させ、神経系細胞の遊走やシナプスの形態的変化、神経活動電位の状態などの解析を試みてきた。そこで今年度は特に、安定的に成熟したニューロンを得る培養方法を確立させ、ニューロン間におけるネットワークの評価を行う系を確立させることに取り組んだ。その結果、ヒトiPS細胞から安定的に成熟したニューロンを得るためには、マウスアストロサイトとの共培養が不可欠であることが明らかとなった。アストロサイトは再分裂しないように処理したマウス由来初代アストロサイトを用いた。アストロサイトをフィーダーとした培養皿上で培養したニューロンで、成熟状態を確認したところ、約50日後にCaイメージングによって活動電位が確認できた。また、樹状突起におけるシナプスをシナプス前膜と後膜それぞれに対する抗体を用いた免疫組織染色によって確認したところ、両抗体のシグナルが重なる部分(spine)が確認され、シナプス形成されていることを確認することができた。神経細胞間における電位活動の伝達は、Caイメージング画像を解析することによって評価する系を確立した。また、シナプス形成は、樹状突起長に対するspine密度によって解析する系を確立させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、アストロサイトとの共培養によってヒトiPS細胞由来神経細胞を成熟した段階まで分化誘導することができるようになった。また、成熟した神経細胞の生理学的評価をCaイメージングによって行う系を確立させることができ、ネットワークとしての病態解析システムが整った。シナプス形成も免疫組織染色で評価する系を確立させており、一部データを取り始めている。ヒトiPS細胞のアストロサイトへの分化誘導は現在取り組んでいるところであり、これらは研究計画どおりに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は神経細胞の分化誘導法やその評価方法の系を確立させることに取り組んできた。この系を用いることによって正常対象と疾患細胞の間での電気生理学的な、あるいは解剖学的な違いを検討し、病態解析に繋げていく予定である。次年度以降は特に、ニューロンとアストロサイトとの関係性を解析するためにはどのような系を立ち上げる必要があるか等について検討することを考えている。これらの手法を検討・確立させ、計画どおり疾患の病態解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はライフイベント(出産)による研究の中断により、次年度使用額が生じた。 翌年度に物品費として細胞培養に必要となる消耗品購入に使用する予定である。
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