神経発達障害を示す患者由来iPS細胞を用いたこれまでの研究から、患者由来細胞ではシナプスの形成不良や、ニューロンの神経電位活動の低下を示すことが明らかになってきた。一方、これまでに単に指示組織であると考えられてきたアストロサイトにも、神経活動を担う機能があることが近年明らかになりつつある。ただし、実際の患者由来細胞でそのことが示されたという報告はない。そこで本研究では、神経発達障害を示す患者由来iPS細胞を用いて、ニューロンだけではなく、アストロサイト等の神経系細胞に分化誘導させて、細胞間ネットワーク機能を評価することによる病態解明を行い、新たな知見を明らかにすることを目的とした。 そこでiPS細胞からアストロサイトへの分化誘導に向けて取り組んだ。分化誘導法としては、特にCiRAから報告のあったKondoらの方法(Acta Neuropathol Commun.2016)を用いた。この不法は神経分化誘導法として用いられているembryoid bodiesを介する培養方法である。embryoid bodiesから遊走してきた細胞をさらにreseedし、神経分化誘導因子を添加した培地へ切り替えることによってアストロサイトへの誘導を行った。その結果、形態的にアストロサイト類似の細胞が得られたため、遺伝子発現解析や免疫染色などにより、この細胞が真にアストロサイトに分化しているかどうか検証するしているところである。
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