研究課題/領域番号 |
17K18134
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
中尾 賢一朗 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (20621618)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨 / 薬物分析 / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
本研究者はこれまでに血液、筋肉、骨中の覚せい剤濃度を比較し、骨中の覚せい剤濃度が一番高くなることを見出した。これらの研究成果から薬物分析における骨の有用性に着目し、180日間土中に埋めた骨から経時的に覚せい剤を検出し、血液や尿が採取できなくても骨が分析試料になりうることを示した。これらの研究成果を踏まえ、本研究は、血液や尿の採取が難しい焼死事例を想定し、高温曝露した骨の有用性を骨中の覚せい剤濃度と骨の組織学的視点から検証することである。その第一段階として加熱温度および加熱時間に対する覚せい剤濃度の経時的変化について、加熱時間と加熱温度を変化させて覚せい剤濃度の挙動を解析することを目的に研究計画を立案した。そして第二段階として、覚せい剤を動物に投与し一定期間後、骨試料を採取し、実際に燃焼実験をおこなう計画を立案した。同研究については東京女子医科大学動物実験倫理委員会の承認を得た。 試料を燃焼させる装置(以下マッフル炉という)の操作法習得と骨中の覚せい剤濃度を液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)を用いて測定するための検量線作成のために、実際に骨試料を研究計画書に記載した加熱温度と加熱時間で燃焼させた。しかしながら、一部の加熱温度と加熱時間の組み合わせにおいて、燃焼後の骨試料が非常に脆くなり骨試料の回収が難しくなることが分かった。さらに、骨試料を燃焼させた時にマッフル炉から発生する臭気の問題が判明した。この二つの対応策として現在加熱温度と加熱時間の再設定と脱臭装置の購入を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マッフル炉の設置場所について、当初強制的に排気されるよう既存のドラフトチャンバー内に設置して使用することを前提に機器選定を行っていたが、ドラフトチャンバー内の架台の耐荷重に合致するマッフル炉の選定に時間がかかり実際に入手できたのが平成29年10月であった。また、計画の段階では参考文献を基に加熱温度を設定していたが、プレ実験の結果、計画立案した一部温度で加熱すると骨試料の回収が困難になることが判明した。さらに、骨試料を加熱させた際に発生する臭気がやや強く、ドラフトチャンバーの排気口の設置場所との関係上問題となることが判明した。これらの問題を解決するために、加熱温度と加熱時間の見直しと、購入したマッフル炉に合致する脱臭装置の選定に時間がかかった。 そうした事情により、当初の計画では平成29年度中に骨中の覚せい剤濃度の測定と平成30年度に計画している形態学的解析に用いる骨試料を採取・保存する予定であったが達成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況から解決すべき課題として、加熱温度および加熱時間の再設定を行うことである。参考にした文献値をそのまま適用したため、マッフル炉の規格を加味していなかった。現在加熱温度と加熱時間の再設定を行っている。 次に臭気の問題だが、購入したマッフル炉に接続できる脱臭装置を平成30年度の本科研費予算で新たに購入し、臭気軽減に努める。 LC-MS/MS測定するにあたり、骨試料からの薬物抽出法は既存研究と同じ方法のため、骨試料が揃えばすぐに抽出操作ができLC-MS/MS測定ができる。研究の加速化を図る。また、骨試料の凍結切片作製については日常業務で行っているため問題ないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在繰越金を含め平成30年度予算として約125万円である。繰越金が生じた理由として、平成29年度当初に購入を予定していた卓上型超低温槽(予算申請額:63万円)の購入を止めたこと、さらにマッフル炉(予算申請額:55万円)と同程度の品質で、より安価なマッフル炉(購入金額:19万9,800円)を購入できたこと、また、平成29年度予算として旅費および消耗品代として約200万円を申請していたが、研究の進捗状況がおもわしくなく、学会参加費や消耗品等の支出がほとんどなかったことが挙げられる。 平成30年度の使用計画については以下の内容で計画している。1. 平成29年度に購入したマッフル炉に接続できる脱臭装置(20万円)の購入。2. 凍結切片を作製するために必要な消耗品(80万円)の購入。3. 学会参加等の旅費や論文作成に関わる経費(25万円)を予定している。
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