研究課題
これまでADAMTS9が細胞外だけではなく、ER内で機能し、ADAMTS9の発現抑制により、ER-Golgi間の蛋白質輸送が阻害されること、この機能はC末端にあるGONドメインが重要であることを見いだした。さらに、C.elegansにおいてADAMTS9/GON-1発現抑制により、「分泌蛋白質の蓄積(2時間後) → ERストレスの負荷(5時間後)→ ERの形態変化(24時間後)」の順で細胞に著しい変化が起きることを既に明らかにした(2012. 発表済み)。このため、細胞内におけるADAMTS9/GON-1の作用点を解明するためには、ADAMTS9/GON-1の機能を抑制した直後に起きる細胞の変化を調べる必要があった。そこで平成29年度の研究計画に基づき、KillerRedを融合したGONドメインをHEK293に発現させ、緑色光を照射し、GONドメインが失活した直後に起こる細胞の変化を検討した。その結果、GONドメインが失活した直後に、細胞質のカルシウムイオン濃度が上昇することを明らかにした。さらに、様々な阻害剤を用いた実験より、そのカルシウムイオンはERから出てきたものである可能性が高いことを見いだした。この結果より、GONドメインが欠損することにより、ER内のカルシウムイオンの恒常性が保たれなくなることが、ER-Golgi間の小胞輸送が正常に行われない原因であることが示唆された。また平成30年度以降の研究計画に基づき、免疫沈降法を用い、gon-1変異体の表現型を抑圧する遺伝子産物の中から、GONドメインと結合する蛋白質を見いだした。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に示した通り、細胞内におけるADAMTS9/GON-1作用点を解明しつつあるため。さらに、次年度に計画していた、GONドメインと結合する分子が見つかっているため。
GONドメインが失活することより、ERからカルシウムイオンが流出する可能性が示唆されているため、IP3レセプターとGONドメインとの関係を検討する。さらに、免疫沈降によってGONドメインを結合した蛋白質との関係も検討する。このために、免疫沈降法・ウエスタンブロット、抗体染色法を用いる。さらに、GONドメインを失活することにより、細胞質からERへのカルシウムイオンの取り込みが、どのように変化するかを検討する。STIM1・Orai1が関与するSOCEが変化しているか否かも検討する。
次年度使用額が生じた理由細胞培養と免疫沈降がスムーズに行えたため、使用した消耗品が少なかった。使用計画細胞培養用のスライドチャンバー、ガラスボトムディッシュ、トランスフェクション用の試薬の費用に充てる。さらに、免疫沈降用の抗体、ビーズの費用とする。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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