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2018 年度 実施状況報告書

リアルタイム被害予測システムの社会的逆機能の批判的検討:SPEEDI事例を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 17K18139
研究機関東京電機大学

研究代表者

寿楽 浩太  東京電機大学, 工学部, 准教授 (50513024)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードSPEEDI / 科学技術社会学 / 構造災 / 政策の失敗軌道 / リアルタイム被害予測システム / シミュレーション / 防災
研究実績の概要

前年度に引き続き、計画に従って質的調査調査(関係者への聞き取り調査や文献調査)を進めるとともに、特に、海外の類似技術事例との比較を進めるため、スウェーデンにおけるSPEEDI類似シミュレーションシステムの制度的・社会的位置づけや、関係者(政策担当者、研究者等)の認識を海外調査により確認した。スウェーデンででは、シミュレーションシステムの原子力防災への活用について、国情の特性(例:極めて少ない原子力発電所周辺人口、原子力利用に関する市民の関心は事故や防災ではなく高レベル放射性廃棄物処分に向いている、等)を十分認識しながら、国際的な考え方や他国動向も踏まえつつ、より手厚い住民防護の方策を具体的・実効的に検討・実装している様子がうかがわれ、日本の状況との差異が浮き彫りとなった。また、原子力以外の防災分野との比較検討について、洪水対策のシミュレーション防災研究の専門家への聞き取り調査を行い、シミュレーションへの課題な社会的期待の存在など、問題の共通性を確認した。

なお、昨年度までの成果は、研究連携先である菅原慎悦氏との共著で英文のbook chapterとして平成30年5月に出版された。また、科学技術社会論分野の国内外の主要学会である4S (Society for Social Studies of Science)、科学技術社会論学会、日本原子力学会でこれまでの研究成果を口頭発表したほか、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)と欧州食品安全局(EFSA)が共催したInternational Conference on Uncertainty in Risk Analysisでポスター発表し、他分野の関連研究者への国際的な発信も図った。また、シンガポール・南洋理工大学のS. Amir准教授の招へいにより、同大における講義で本件研究成果を紹介し、国際的な教育への貢献にもつなげた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記のように計画に沿って国内外の調査を進め、研究成果の公表・出版もbook chapter1件、国内外主要学会での複数回の口頭発表を行うなどしており、概ね順調に推移していると考えている。特に、海外調査により、これまでに調査済みであったフランス・カナダに加えて、スウェーデンにおいても、原子力防災の制度や運用の実態において、SPEEDIに類似したリアルタイム被害予測システムによって意思決定をいわば「自動化」するような考え方は取られておらず、むしろ、それぞれの国情やそれにより生じる原子力防災へのニーズを関係者が明確に認識し、むしろ、リアルタイム被害予測システムを総合的・戦略的な判断を行うための人材育成、制度設計、運用改善、実績蓄積等に能動的に取り組んでいることが引き続き確認されたことは、日本におけるSPEEDIをめぐるこれまでの政策的・社会的展開の特異性を浮き彫りにする意味で重要な成果であったと言える。また、本年度は本研究の眼目の一つである原子力以外の分野との比較検討を行うための調査にも着手し、研究開始前の仮説(原子力分野での問題状況との共通性)が的外れではないことが示唆されており、今後、実証的なデータをさらに蓄積することで、本研究の主張がより強固に支持される可能性が見通せている。

今後の研究の推進方策

平成31(令和元)年度は引き続き質的調査を拡充するとともに、計画書に掲げた、関係者ワークショップの実施を目指す。また、8月~9月に米国で開催される4S (Society for Social Studies of Science)、10月にイタリアで開催されるSHOT(Society for the History of Technology)、11月の科学技術社会論学会、3月の日本原子力学会等を念頭に、国内外の関連分野の複数の学会大会・学術会議において研究成果を報告することを計画し、研究成果の発信に努める。

なお、研究代表者が平成30年度より所属本務校での役職を命じられ、校務負担が増大していることから、引き続きエフォート率管理の最適化を図る必要がある。RAの活用等により、研究業務の効率化を図ろうと考えている。

次年度使用額が生じた理由

国内調査旅費や大学院生アルバイト人件費が想定を下回ったこと、所属校の学内研究費の支援も得られたこと、研究用PC関係について既存機器が継続使用できたこと、出張旅費を中心に経費節減に務めたこと等により、次年度使用額が生じた。次年度は本件研究の最終年度であり、専門家ワークショップの開催を計画していることや、成果発表のための国内外での学会発表等を引き続き実施することから、次年度使用額をこれらの用途等に有効に活用したいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Calculation Automates the Decision: Contested Imaginaries of Real-time Radiological Simulation and Probabilistic Risk Assessment for Nuclear Emergency2018

    • 著者名/発表者名
      Kohta Juraku and Shin-etsu Sugawara
    • 学会等名
      4S 2018 Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 原子力緊急事態における意思決定の戦略性とリアルタイム被害予測システムの役割: SPEEDIをめぐる論争状況の批判的検証を手がかりに2018

    • 著者名/発表者名
      寿楽浩太、菅原慎悦
    • 学会等名
      日本原子力学会 2018年秋の大会
  • [学会発表] 「リアルタイム被害予測システム」の社会的逆機能の批判的検証(2):緊急時の意思決定の「自動化」への憧憬と構造災2018

    • 著者名/発表者名
      寿楽浩太
    • 学会等名
      科学技術社会論学会 第17回年次研究大会
  • [図書] The Sociotechnical Constitution of Resilience: A New Perspective on Governing Risk and Disaster2018

    • 著者名/発表者名
      Sulfikar Amir (ed.), Charlotte Mazel-Cabasse, Stephen Healy, Vivek Kant, Justyna Tasic, Jen Henderson, Anto Mohsin, Megan Finn, Kurniawan Adi Saputro, Shin-etsu Sugawara, Kohta Juraku, Makoto Takahashi, Masaharu Kitamura, Bingunath Ingirige, Gayan Wedawatta, Anique Hommels
    • 総ページ数
      289
    • 出版者
      Palgrave Macmillan
    • ISBN
      978-9811085086

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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