研究課題/領域番号 |
17K18139
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
寿楽 浩太 東京電機大学, 工学部, 教授 (50513024)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | SPEEDI / 科学技術社会学 / 構造災 / 政策の失敗軌道 / リアルタイム被害予測システム / シミュレーション / 防災 |
研究実績の概要 |
本研究は、前年度までにすでに実証的な研究成果を挙げてきたが、当初計画の最終年度のまさに終盤から新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、研究の総仕上げと位置づけていた関係者ワークショップを実施できない事態となり、日本学術振興会の措置を受けて研究期間の延長を申請し、受理された。 今年度は新型コロナウイルス感染症感染拡大の収束によりWSが実施可能となることに期待しつつ、引き続き学術的な成果の出版・発信に努めた。 例えば、オンライン開催となった、4S (Society for Social Studies of Science)の年次研究大会(2020年8月)では前年度に続き、本研究の成果を含む発表を連携先研究者と共同で実施した。 また、前年度に報告した、米国原子力学会(ANS)の論文誌Nuclear Technologyの「原子力の社会科学の新機軸」特集号所収論文(本研究研究代表者が筆頭著者)についても、査読のプロセスでの繰り返しの修正を経て、2021年3月に最終的に論文が受理された。原子力分野のもっとも主要な論文誌の一つである同誌に論文が受理されたことは、学際的な研究を志向する本研究にとって大きな成果である。 また、2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故から10年を迎えるにあたり、一般メディアから本研究の成果を踏まえた一般向け記事の執筆依頼があり、解説記事がWeb掲載された。当該記事についてはSNS上でも一定の反響が得られ、広く一般市民、ジャーナリスト、行政実務家、工学系研究者等への成果発信、社会的な問題提起の機会となった。加えて、研究代表者は東京大学、千葉大学等で複数の科目を非常勤講師として授業を担当し、その中でも本研究の研究成果を紹介しつつ科学技術社会論ならびに科学技術の社会学の学術的・社会的意義を解説し、履修学生から肯定的なフィードバックを多数得たことから、研究成果の教育への還元も大いに実現できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度末に認められた研究期間の延長により、研究論文の英文主要誌での受理など、成果の出版の面での進展はあったものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続き、研究代表者も所属校での遠隔授業等の対応に追われ、また、当初から開催予定だった関係者ワークショップの対面開催は引き続き困難な状態が継続したことから、当初計画に比べるとなおも遅延があると言わざるを得ない。 このため、研究期間の再延長を申請し、同感染症に係る事態の推移を慎重に見きわめつつ、引き続き所期の成果を得るべく努力することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に入っても、本報告書の提出時点では新型コロナウイルス感染症感染拡大は継続している。本研究はすでに英文主要誌に論文が受理されるなど一定の成果は挙げているものの、関係者ワークショップを開催して成果を当事者にも還元しつつ、相互の学びを深めることで社会的な問題への対処にもつなげるという所期の目標は未だ達成できていない。 同ワークショップについては、昨年度においてテレビ会議システムを活用した開催も検討したが、参加を求めるべき関係者の間での信頼関係が既に十分に存在するとは必ずしも言えないケースも多々ある一方で、当事者間では意見や利害が異なる部分も大きいことを本研究がまさに明らかにしていることから、研究者側も経験が十分でない中での実施は社会的・倫理的に問題を生じる懸念が残った。 このため、2021年度中に新型コロナウイルス感染症に係る状況が改善し、対面状況でのワークショップ開催が可能となるタイミングを見きわめることとしたい。 なお、研究代表者が2018年度より所属本務校での役職を命じられ、校務負担が増大している状況が継続している上、遠隔授業やハイブリッド型授業の実施等により、研究代表者の教育上の負担も増している。このため、エフォート配分の管理になお一層の注意を払いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」「今後の研究の推進方策」においても述べたように、2020年度は年度を通して新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続き、本研究において研究の総仕上げと位置づけていた関係者ワークショップが開催できなかった。 同ワークショップについては、昨年度においてテレビ会議システムを活用した開催も検討したが、参加を求めるべき関係者の間での信頼関係が既に十分に存在するとは必ずしも言えないケースも多々ある一方で、当事者間では意見や利害が異なる部分も大きいことを本研究がまさに明らかにしていることから、研究者側も経験が十分でない中での実施は社会的・倫理的に問題を生じる懸念が残った。 このため、2021年度中に新型コロナウイルス感染症に係る状況が改善し、対面状況でのワークショップ開催が可能となるタイミングを見きわめることとしたい。
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