研究課題/領域番号 |
17K18139
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
科学社会学・科学技術史
社会学
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
寿楽 浩太 東京電機大学, 工学部, 教授 (50513024)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SPEEDI / 科学技術社会学 / 構造災 / 政策の構造的無知 / リアルタイム被害予測システム / シミュレーション / 防災 |
研究成果の概要 |
本研究は、2011年の福島原発事故後に大きな社会的争点ともなった「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)を主な対象事例とし、福島原発事故とその後の検証や論争を経てもなお残る原子力防災の備えの問題点を浮き彫りにした。リアルタイム被害予測システムに関しては、「予測」に対する一般的な社会的期待のために議論がそうした両極端に触れやすい。例えば他国の類似システムに関する事例では、それによる誤謬を防ぐために、様々なしくみを制度や組織に組み込む工夫が行われていた。日本の場合は依然、そうしたしくみを欠き、科学社会学でいう「構造災」が生じていることが明らかとなった。
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自由記述の分野 |
科学技術社会学
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は科学社会学における「構造災」概念を援用し、「政策の構造的無知」という現象を定式化した。本研究における調査においても、SPEEDIの利用に関する地域住民、関係者の関心は高く、利用継続や拡大を求める見解が見られた。他方、原子力規制当局は今後の原子力緊急事態におけるSPEEDIの不使用を決定している。本研究は重大な公益にも係る緊急事態への備えに関して、最も欠けているものは利用の是非に関する決着ではなく、政策、運用、研究開発、緊急時対応など一連の場面において適切な活用を担保するために専門知を活用するしくみの欠如であることを明らかにしており、学術的、社会的両面で意義が大きい成果だと考える。
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