研究課題/領域番号 |
17K18146
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
恒岡 弥生 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (50734597)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺静脈心筋 / 細胞内カルシウム / 自発活動 |
研究実績の概要 |
心房細動は心房が不規則に興奮し、興奮波が無秩序に心室へ伝わることで不整拍動、動悸やめまいが起こる不整脈である。心房細動発生後、心房内において血栓が形成されると心筋梗塞や脳梗塞など重篤な合併症の原因となることから、発症早期の治療・対策が必要とされているが、心房細動そのものに対する有効かつ安全な治療薬は未だ存在せず、発症メカニズムのさらなる解明と新たな治療ターゲットの探索が求められている。1998年に心房細動開始の引き金となる「異所性の電気的興奮」の90%が肺静脈血管壁に存在する心筋層で発生していることが報告された。肺静脈心筋における異所性の電気的興奮の発生メカニズムを解明し、心房細動を合併する病態の肺静脈を調べることが心房細動発症メカニズムのさらなる解明と新たな治療ターゲットの探索につながると考えられる。 本申請では、肺静脈心筋における異所性の電気的興奮に対して、肺静脈を構成する周辺細胞が影響を及ぼすか明らかにするとともにそのメカニズムを解明することを目的とした。本年度は、肺静脈心筋より細胞を単離し、心筋細胞のカルシウム動態を心房筋、心室筋と比較した。その結果、肺静脈心筋の細胞形態およびカルシウムの動き(カルシウムスパーク、ウェーブ、トランジェント)は心房筋と類似していることが明らかになった。これまでの結果と合わせて、肺静脈心筋で自発活動がみられる原因は、細胞のカルシウム動態にあるのではなくカリウム電流が少ないという性質を有するために周囲の細胞の影響を受けやすい可能性があることが明らかになった。現在、内皮細胞や平滑筋細胞の自発活動に及ぼす可能性を薬理学的観点、形態学的観点より調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、薬理学的検討により平滑筋や内皮細胞の肺静脈心筋への影響を調べる予定であったが、所属研究室を移動したため現在は実験系の構築を行っている段階である。病理化学的検討に関する実験系と収縮力測定を行う実験系の構築には成功しており、これから評価を行う段階である。
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今後の研究の推進方策 |
正常動物および病態モデルを用いて、薬理学的手法、免疫組織化学的・病理化学的手法を用いて評価を行う。肺静脈心筋の自発活動の発火頻度に対して、L-NIOやイベリオトキシンの評価を行う。また、対応したタンパク質の発現を免疫染色により確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、肺静脈自発活動に対しいくつかの薬理学的実験と組織化学的評価を行う予定であったが、研究室を移動し使用する装置が変わったため、実験系構築に時間がかかり、未使用額が生じた。 次年度は評価を行う。未使用額は、動物や抗体、試薬等の消耗品に充てることとしたい。
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