研究課題/領域番号 |
17K18149
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
坂本 邦暢 東洋大学, 文学部, 助教 (80778530)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神学 / 哲学 / 宗教改革 / 三位一体 / 科学革命 / デカルト |
研究実績の概要 |
研究計画にそって、16世紀から17世紀にかけての、プロテスタント圏での形而上学・神学の展開を、幾人かの著述家の著作の分析を通して追跡した。まず年度前半には、プロテスタント圏での哲学・神学教育をおおきく決定づけたフィリップ・メランヒトンの著作を分析し、彼が哲学を、神の存在を証明するための重要な集団として位置づけていたことを確認した。次世代のルター派哲学者のヤーコプ・シェキウスも、哲学が神学に寄与できると考えていたが、寄与の内実については、メランヒトンと異なる想定をしていた。シェキウスにとって対処せねばならなかったのは、三位一体論を否定する「異端」の存在であった。この異端を論駁するためには、哲学が不可欠だとシェキウスは説いたのだった。以上の成果は、「聖と俗のあいだのアリストテレス スコラ学、文芸復興、宗教改革」(『Nyx』第4号)として発表した。 年度後半は、シェキウスがターゲットとした反三位一体論側の著作を検討した。ファウスト・ソッツィーニは、聖書解釈上の権威を教会がもつことを否定し、理性と文献学にのっとって聖書を読む必要を唱えた。その結果、三位一体と自然神学を否定する学説に到達したのだった。調査の結果、彼の神学は、やがてアルミニウス派の教説の一部と合流し、デカルトの新哲学が現れるにあたっての背景を形成するにいたったことが、明らかとなった。以上の成果は、「デカルトに知られざる神 新哲学とアレオパゴス説教」(『白山哲学』第52号)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、新たなリサーチにもとづく論文を2本発表することができ、その点で研究は順調に進展していると考えられる。ただし、2018年3月に勤務先の校務により、約2週間海外で業務に携わらなければならなかったため、予定していた国外での史料調査ができなかった。次年度の夏にまわすなどして、調査の遅れを取り戻す計画である。また、初年度の調査の結果、反三位一体を唱えた異端の影響が、当初想定していたよりも大きなものであることが分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
プロテスタント圏での神学・形而上学の展開を追っていくという基本方針は変わらない。研究計画通り、シェキウスとその弟子たちが参画した神学論争の分析を行っていく予定である。ただしその際に、計画時よりも重点的に論敵である反三位一体論者側の主張の吟味と、その学説の拡散の模様の追跡を行うことになる。これに合わせ、シェキウスらの側の著作の分析の範囲がやや狭まることになるだろう。
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