前年度からの予定通り、「有限な神と無限の空間 ウォルスティウスとゴルラエウス」(『Minerva』第1巻所収)の改訂英語版を作成し、初期近代の原子論に関する英文の論文集の編者に提出した。現在、編者からのコメントを待っている状態である(論文の内容については、前年度の実績概要を参照)。
年度後半は、これまで本研究課題で行ってきたプロテスタント形而上学についての研究を踏まえて、加藤喜之博士(立教大学)とともに共著論文の執筆に取り組んだ。主題は、本研究で重点的に扱ってきたソッツィーニ主義の異端が、17世紀のデカルト主義者にどのような影響を与えたかである。この研究では、保守派の神学者によって、ソッツィーニによる神の意志の理解が、デカルトによる神の意志の理解と同一視された点が、デカルトの哲学がどのように受容されたかに大きな影響を及ぼしたことを明らかにできたと考えている。年度内にほぼ論文は完成し、2020年4月に英語圏の学術雑誌に投稿した。2020年6月現在、審査待ちの状態である。
今後の研究の予定としては、共著論文を執筆するなかで重要な問題として浮かび上がってきた神の意志の問題を、分析対象を17世紀のネーデルラントの神学者に移しながら、さらに調べていくことを考えている。これにより、デカルトをはじめとする新哲学が受容されるにあたっての、神学的な文脈が明らかになると考えられるからである。それと同時に、前年度の研究実績の概要にも記したように、ソッツィーニ主義と結び付けられた重要人物である、コンラッド・ウォルスティウスについての調査も行う予定である。
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