研究課題/領域番号 |
17K18152
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
李 振 東洋大学, 経営学部, 講師 (30759923)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 消費者行動 / アイトラッキング / 視覚的注意 / ビジュアル効果 / ビジュアルマーケティング |
研究実績の概要 |
2018年度では、マーケティングにおけるビジュアル効果の検証に焦点を当て、アイトラッキングの実験を大量に行い、実験で収集した注視情報の定量的測定を行った。 この段階の研究では、アイトラッキング実験を中心に、様々な実験を通して、被験者がビジュアル刺激要素に対する視覚的反応を指標化し、また予備検証として、アンケート調査で消費者の購買意思決定を聞き、視覚的注意と消費者の購買意思決定の間の関係を試みた。 代表的な実験として、2018年9月から10月までに、473人の被験者に対して、POP広告のビジュアル効果に関する実験を行い、広告のデザイン要素を変更することで、消費者の視覚的注意にどのような影響を与えるか確認した。この実験では、専用のアイトラッカーを利用し、被験者が各刺激要素に対する注視時間、注視頻度、注視間隔、瞳孔の大きさなどの指標に対して定量化した。その結果、広告要素の効用と重要度が高いほど、広告要素への注意時間が長く、注視回数が多く、それに瞬時に瞳孔が大きくなる傾向が見られた。さらに、それらの指標を購買意思決定の調査結果にマッチングし、統計解析により、注視時間が長いほど、商品は購入されやすいことがわかった。 また、類似の実験として、2018年11月に、オンラインショッピングにおけるバナー広告がユーザーの視覚的注意に与える影響を調査し、視線の停留時間と移動ルートを解析することによって、同様な傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究予定としては、実験で収集した注視情報の定量化を行うことである。 その予定の通り、平成30年度では、複数のアイトラッキング設備を行い、視線追跡実験を複数回行った。現時点では、リアルな環境における測定が若干困難のため、ほとんどの実験はモニター上で実施した。実験により、被験者の注視時間、注視頻度、注視間隔、瞳孔の大きさなどの指標が測定され、それらの指標を専用ツールで定量化・可視化をしている。また、このあとのマーケティング上のビジュアル効果を測定できるため、マーケティング成果指標として、関連商品の販売結果データを現在複数のオンライン市場よりWeb Crawlingで集めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、実験で収集した注視情報を、消費者実際の行動結果(e.g. 購買結果、クリック率など)にマッチングし、先行研究に踏まえて統計的モデルを構築し、マーケティング上におけるビジュアル効果と消費者購買行動の関係に関する実証解析を進める予定である。 現段階のアイトラッキング実験では、計測データを個別に確認する必要があるため、注視時間、注視頻度、注視間隔、瞳孔の大きさの変化などの指標を測定する際の効率は高くない。そのため、今後視覚データを効率よく計測できるシステムを構築する必要があると考えられる。また、モニター上だけでなくリアルな買い物環境における視線追跡実験も考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、アイトラッキング実験で収集した注視情報の定量化を中心にしており、複数台のデバイスを同時に利用している。そのため、大量の注視データが収集され、短期間でデータを集計することが難しい。そのため、視覚データを効率よく計測できるツールの開発依頼や、大量データの並列計算ができる解析ソフトとクラウドサービスを契約する予定がある。また、商品販売結果データを収集するさいに利用しているクローリングサーバーの請求が遅れたため、次年度使用額が生じていた。2018年度の実験結果を研究成果としてまとめ、積極的に発信するため、2019年度には関連する国際会議やワークショップに参加し、研究発表する予定もある。
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