研究課題/領域番号 |
17K18156
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
長野 伸彦 日本大学, 医学部, 助教 (90794701)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | チオレドキシン / 新生児慢性肺障害 / 新生仔マウス / 高濃度酸素暴露 / 肺胞発達遅延の抑制 / 炎症性マーカーの上昇抑制 / マクロファージの遊走抑制 |
研究実績の概要 |
【背景】抗酸化酵素であるチオレドキシン(TRX)を過剰発現させたマウスは成獣において高濃度酸素性肺障害に対し防御作用を示すが、新生仔におけるTRXの重要性については未だ解明されていない。また、血清TRX-1値と新生児慢性肺疾患(CLD)との関連について検討を行った報告はない。 【目的】①新生仔期高濃度酸素性肺傷害におけるTRXの重要性を検討する。②血清TRX-1値とCLDとの関連を明らかにする。 【方法】TRXトランスジェニック(TRX-Tg)、 野生型(WT)新生仔マウスに対し高濃度酸素またはルームエアを96時間暴露した。日齢4、14で肺を摘出し、(1)HE染色、エラスチン染色、免疫染色を用いての組織学的検討、(2)定量PCRを用いての遺伝子定量解析を行った。また、早産児25名の出生時と日齢14の血清TRX-1値をELISAで測定を行い、CLDとTRX-1との関連性について検討した。 【結果】WTは新生仔期高濃度酸素暴露により、mean linear intercept増加および二次中隔数減少を示し(肺胞発達遅延)、これは日齢14まで続いた。一方、高濃度酸素暴露されたTRX-Tgでは日齢4、14共にWTと比較してこれら肺胞発達の遅延を抑制した。また、日齢14においてWTに比しTRX-Tgでは炎症性マーカーであるIL-6 、MCP-1、CXCL2の肺内mRNA発現が有意に減少し、マクロファージの遊走を阻害した。また、血清TRX-1値は非CLD群と比較して、CLD群で出生時に有意に低値であった。 【結論】TRX-Tgは新生仔期高濃度酸素暴露による炎症性マーカーの上昇を抑制し、高濃度酸素性肺傷害に対する防御効果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)新生仔期高濃度酸素暴露による肺傷害モデル動物(新生児慢性肺疾患(CLD)モデル)を確立する。→新生仔期高濃度酸素暴露により、新生仔マウスにCLD児に認めれれる肺胞発達遅延と同様の変化が肺病理組織検査で認められることを確認した。再現性も高く、新生仔期高濃度酸素暴露による肺傷害モデル動物はCLDモデルとして有用であると考えられるが、子宮内感染でもCLDは認められるので、子宮内炎症によるCLDモデル動物の作成も今後の課題であると考えられる。 2)野生型、TRX Tgマウスの新生仔期に高濃度酸素を暴露し、両者の表現型の違いを比較する。→野生型マウスは新生仔期高濃度酸素暴露により、mean linear intercept増加および二次中隔数減少を示し(肺胞発達遅延)、これは日齢14まで続いた。一方、高濃度酸素暴露されたTRX-Tgマウスでは日齢4、14共にWTと比較してこれら肺胞発達の遅延を抑制した。また、日齢14においてWTに比しTRX-Tgでは炎症性マーカーであるIL-6 、MCP-1、CXCL2の肺内mRNA発現が有意に減少し、マクロファージの遊走を阻害した。この結果からTRXはCLDに対する新たな治療薬になる可能性が示唆された。 3)患者検体中TRX濃度を測定し、CLDの発症・重症度との関連を調べる。 →まだ検体数は少ないが、早産児25名の出生時と日齢14の血清TRX-1値をELISAで測定を行い、CLDとTRX-1との関連性について検討した。血清TRX-1値は非CLD群と比較して、CLD群で出生時に有意に低値であった。血清TRX-1は新生児慢性肺疾患の新規バイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は将来の臨床応用に向けて、CLDマウスモデルに対するヒト組み換えチオレドキシン蛋白の有効性を検証し、臨床応用を目指した橋渡し研究を行う。 1)TRX投与により高濃度酸素性肺傷害を予防・治療し、CLDに対する新規予防・治療法の開発を行う。出生した新生仔マウスにヒトTRX蛋白を静脈内投与する。その後高濃度酸素を暴露し、TRX投与の高濃度酸素性肺傷害に対する予防・治療効果を検討する。「TRX投与による抗酸化作用増強」というCLDに対する新規治療法の開発が期待される。 2)TRX mRNA・蛋白発現量の測定により、予後を早期に予測し、再入院の頻度を軽減させることが期待される。TRX mRNAまたは蛋白の血中または気管支肺胞洗浄液中濃度を定期的に測定する。これにより患児の呼吸器予後を早期に予測できることが期待される。高リスク群として、より綿密なフォローアップを行うことができ、NICU退院後の再入院の頻度を軽減させることができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の研究成果を国際学会で発表するために、旅費30万円を研究計画に入れていた。平成29年12月の段階で抄録を登録したが、実際国際学会(米国小児科学会)が開催されたのが平成30年の5月であったため平成29年度分で計画した旅費は、平成30年度に使用する形となった。ウエスタンブロットを用いた蛋白発現量の解析に当初の予定より時間を要し、平成29年度に行う予定であった炎症性サイトカインのmRNA解析の1部を平成30年に施行することとした。
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