研究課題
【背景】チオレドキシン(TRX)は、抗酸化酵素で、細胞内シグナル伝達にも関与するタンパク質である。TRXを過剰発現させたマウスは成獣において高濃度酸素性肺障害に対し防御作用を示すが、新生仔期高濃度酸素性肺傷害におけるTRXの重要性については未だ解明されていない。【目的】新生仔期高濃度酸素性肺傷害におけるマウス肺内TRXの重要性を検討する。【方法】TRXトランスジェニック(TRX-Tg)、野生型(WT)新生仔マウスに対し高濃度酸素(95%)を96時間暴露し、以降はルームエア下で飼育した。日齢4、14で肺を摘出し、(1)HE染色を用いての組織学的検討、(2)定量PCRを用いての各種遺伝子発現解析を行った。いずれも高濃度酸素非暴露マウスをコントロールとした。【結果】WTは新生仔期高濃度酸素暴露により、mean linear intercept増加および二次中隔数減少を示し(肺胞発達遅延)、これは日齢14まで続いた。一方、高濃度酸素暴露されたTRX-Tgでは日齢4、14共にWTと比較してこれら肺胞発達の遅延を抑制した。また、日齢14においてWTに比しTRX-Tgでは炎症性マーカーであるIL-6 、MCP-1、CXCL2の肺内mRNA発現が有意に減少し、マクロファージの遊走を阻害した。【結論】TRX-Tgは新生仔期高濃度酸素暴露による炎症性マーカーの上昇を抑制し、高濃度酸素性肺傷害に対する防御効果を示した。本研究内容は、Biomedicinesに掲載された。Attenuation of Hyperoxic Lung Injury in Newborn Thioredoxin-1-Overexpressing Mice through the Suppression of Proinflammatory Cytokine mRNA Expression.
すべて 2020
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Biomedicines.
巻: 8 ページ: 1 13
10.3390/biomedicines8030066.