研究課題/領域番号 |
17K18158
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
三戸 勇気 日本大学, 芸術学部, 講師 (10451303)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | モーションキャプチャ / チェンバロ / グランドピアノ / 電子ピアノ / 可視化システム / 演奏動作 / 感情価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は音楽演奏における感情と動作の関連を解明することである。演奏教育の現場において、感情表現法のレクチャーは教師の口頭による指導が多く、教示の意図が正確に学生に伝わりづらい問題がある。そこで、音楽演奏における感情表現法をより明確に提示するため、鍵盤楽器の演奏者の演奏動作はモーションキャプチャを用いて計測し、データを蓄積・解析を行うとともに、演奏教育用のためのグラフィカルな提示システムを開発する。さらに、演奏音との関連を分析するとともに、演奏音の心理評価も併せて実施する。このことより、心理面に障がいをもつ人の音楽療法に繋げていくことができる。 本研究で対象とした鍵盤楽器は、電子ピアノ、グランドピアノ、チェンバロとした。電子ピアノは、鍵盤のタッチレスポンスがグランドピアノとは異なる。また音色も同様にグランドピアノと異なる。チェンバロは、鍵盤楽器ではあるが撥弦楽器のため、ピアノのように音の強弱はつけられない。これらの要因から、3種類の鍵盤楽器による演奏表現の方法について、プロの演奏家と研鑽過程の音大生の比較を行った。 昨年度は、モーションキャプチャにより鍵盤楽器でも音色やタッチレスポンスの違いがあるグランドピアノ、電子ピアノ、チェンバロの3種類の楽器において、6感情(怒り、喜び、優しさ、悲しみ、恐れ、無感情)の演奏に対しプロの演奏家と音大生の演奏動作計測を行った。また、その計測と同時にその演奏の録音も行った。 またその後、このモーションキャプチャデータを分析するため、ノイズ除去、マーカの誤認識などのデータ補正(以下、データ編集)を行った。データ編集されたデータを用いて動作速度、加速度、周波数分析、動きの位置、角度の変化の詳細なデータ分析を行った。また、平均モーション法により、各感情の特徴を抽出し、可視化システムへ応用している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モーションキャプチャシステムを用いて、チェンバロ、電子ピアノ、グランドピアノの3つの鍵盤楽器の演奏動作を計測した。当初の計画では、プロの演奏家と大学生を2名ずつ計測する予定であったが、演奏家の都合がつかなかったため、計測が遅れてしまった。 しかし演奏家を各1名ずつ計測しているため、残りの演奏家は、今後の予定を合わせることにより、当初の予定通りに状況を戻すことができると考えている。 平均モーション法や、可視化システムへの制作などは、予定通り行っているため、おおむね順調に進展していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、鍵盤楽器の演奏家を増やし、モーションデータを集めていく。また、演奏時の録音音源を使用して、SD法による心理評価を行う。主に感情がどの程度伝達されているかの分析を行う。それにより、動作解析、音色の波形分析、演奏の印象評価による相互関係を検討することにより、動作と心理感覚量の定量化を行う。 また、前年度に計測した楽器および演奏者のデータ結果を踏まえて、その演奏と関連性(経験や分野など)が検討できる演奏者を毎年計測を行う。そのデータ編集やデータ分析は前年度と同様に行い、その相違点を検討する。各感情の演奏動作の特徴が視覚的にわかりやすいように、可視化システムの開発を行う。 その可視化システムを実際のレッスンで使用してもらい、演奏家の観点から必要な視点、不必要な視点を精査し、可視化システムの再構築を行い、可視化システムを完成させる。動作解析、音色の波形分析、演奏の印象評価による相互関係を検討することにより、動作と心理感覚量の定量化を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今回のモーションキャプチャ計測の人数をプロの演奏家と大学生を各2名ずつ計測予定であった。しかし、被験者の都合上、本年度の1名ずつのみに留まった。そのため、謝金などに余りが生じた。また、モーションキャプチャ計測において、機器や備品が消耗品となるものが多くある。そのため、実験機器や備品の消耗具合により、物品費に齟齬が生じた。 来年度以降、計測人数ならびに、計測機器を当初の計画通りに戻る予定である。
|