• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

安全で有効な新しい免疫抑制剤の開発:生殖学から免疫学への展開

研究課題

研究課題/領域番号 17K18164
研究機関明治大学

研究代表者

河野 菜摘子  明治大学, 農学部, 専任講師 (00451691)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード精液タンパク質 / 生殖免疫 / 補体 / 前立腺 / 精嚢腺
研究実績の概要

ヒト不妊症の原因は滝に渡っており、男性及び女性因子によって単独で引き起こされる疾患の他に、双方が複雑に絡み合った結果としての病態も考慮されるべきである。本研究では、これまでに注目されてこなかった精液成分に着目し、その機能不全による女性・男性の両側の体内環境システムの異常によって引き起こされる不妊病態の解明を試みる。本研究が成功することにより、精液タンパク質お免疫抑制効果に着目した免疫抑制剤としての創薬につながると考えた。
本年度は、精液タンパク質SVS2, 3, 4, 5, 6の遺伝子群(SVS2-6)を欠損したマウスを用いて、雄マウスの妊孕性を調べた。その結果、SVS2単独で欠損したマウスと比較してより重度の不妊症状を呈することが判明した。解剖学的解析によりSVS2-6KO雄マウスでは前立腺肥大が確認されたことから、前立腺肥大症と不妊の関連、また精嚢タンパク質と前立腺の発達の関連が疑われ、新たな発見につながると考えられた。
一方で、子宮内の殺精子因子を同定する目的で、候補因子である補体C3KOマウスを購入し、解析を行った。その結果、C3KO雌マウスの子宮内において生存精子の割合が高くなることが明らかとなった。この結果から、子宮内での殺精子因子は補体C3である可能性が高くなったが、そのメカニズムについては解明できていない。平成30年度はC3がどのようにして精子を殺しているのか、そのしくみついて検討したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

精液タンパク質SVS2-6を欠損したマウスの表現型解析を行ったところ、SVS2単独で欠損したSVS2KOマウスの雄と比較してより重度の不妊症傾向を示すことが明らかとなった。その原因として、SVS2以外のSVS3,4,5,6のタンパク質の関与も考えられたが、それとは別に前立腺肥大症を発症することも判明した。ヒトにおける前立腺肥大症は男性のQOLに密接に関連する症状であり、その原因ははっきりとは分かっておらず、本研究結果に期待が持てる。前立腺肥大症と不妊、または前立腺肥大症と精嚢タンパク質の関連について、今後調べていきたい。
また、子宮内の殺精子因子の同定には、候補因子である補体C3を欠損したマウスを購入し、解析を行った。その結果、野生型マウスの子宮内での精子生存率は約10%であるのに対して、C3KO雌マウスの子宮では約50%と有意に上昇することが明らかとなった。この結果より、子宮内の殺精子因子は補体C3であろうと考えられるが、そのメカニズムは明らかとなっていない。平成30年度はそのしくみについて解析する予定である。
一方、平成30年度に実験を計画しているヒト精液タンパク質SemgI/IIを挿入したマウスの作製の準備として、本年度にコンストラクトを作製し何度か受精卵にインジェクションを試みている。平成30年度の前半にマウスを作製し、後半で解析が行えるよう準備中である。

今後の研究の推進方策

平成30年度は、雄側の因子SVS2-6を欠損したマウス、雌側の因子補体C3を欠損したマウス、また雄側の因子をヒトSemgに置き換えたマウスの三種類のマウスを使って、子宮内での雄雌のバランスおよび精子の選抜機構が存在しないか調べる予定である。
また、子宮内において補体C3が精子を排除している事実から、SVS2は補体から細胞を保護する免疫抑制剤としての機能が期待されることが判明した。したがって、SVS2は精子以外の細胞も保護する能力があるか、他の細胞も用いて解析する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Ubiquitin-activating enzyme E1 inhibitor PYR-41 retards sperm enlargement after fusion to the egg2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Keiichi、Kang Woojin、Nakamura Akihiro、Kawano Natsuko、Hanai Maito、Miyado Mami、Miyamoto Yoshitaka、Iwai Maki、Hamatani Toshio、Saito Hidekazu、Miyado Kenji、Umezawa Akihiro
    • 雑誌名

      Reproductive Toxicology

      巻: 76 ページ: 71~77

    • DOI

      doi.org/10.1016/j.reprotox.2018.01.001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Exosomes versus microexosomes: Shared components but distinct functions2017

    • 著者名/発表者名
      Miyado Kenji、Kang Woojin、Yamatoya Kenji、Hanai Maito、Nakamura Akihiro、Mori Toshiyuki、Miyado Mami、Kawano Natsuko
    • 雑誌名

      Journal of Plant Research

      巻: 130 ページ: 479~483

    • DOI

      doi:10.1007/s10265-017-0907-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Birthweights and Down syndrome in neonates that were delivered after frozen-thawed embryo transfer: The 2007-2012 Japan Society of Obstetrics and Gynecology National Registry data in Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Yamatoya Kenji、Saito Kazuki、Saito Takakazu、Kang Woojin、Nakamura Akihiro、Miyado Mami、Kawano Natsuko、Miyamoto Yoshitaka、Umezawa Akihiro、Miyado Kenji、Saito Hidekazu
    • 雑誌名

      Reproductive Medicine and Biology

      巻: 16 ページ: 228~234

    • DOI

      doi.org/10.1002/rmb2.12033

    • 査読あり
  • [学会発表] 精液研究からわかってきた子宮の免疫機構2017

    • 著者名/発表者名
      河野菜摘子、今泉明音、吉田 薫、吉田 学、齊藤英和、宮戸健二
    • 学会等名
      第58回 日本卵子学会
    • 招待講演
  • [学会発表] ラクトフェリンと女性機能2017

    • 著者名/発表者名
      河野 菜摘子、坂口 大樹、金井 誠也、出雲 信夫
    • 学会等名
      第19回 応用薬理シンポジウム
  • [学会発表] Antibacterial activities of seminal vesicle secretions in SVS2-6 KO mice2017

    • 著者名/発表者名
      Takeo Yamazaki, Natsuko Kawano and Kenji Miyado
    • 学会等名
      12Th TOIN Internationa Symposium on Biomedical Engineering
  • [学会発表] Analysis of Syrian hamster eggs - Identification of fusogenic factors2017

    • 著者名/発表者名
      Ryo Matsushita, Kenji Miyado, Natsuko Kawano
    • 学会等名
      12Th TOIN Internationa Symposium on Biomedical Engineering
  • [学会発表] Protective effects of seminal plasma proteins on uterine sperm2017

    • 著者名/発表者名
      Daiki Sakaguchi, Kaoru Yoshida, Kazuma Hayashi, Natsuko Kawano
    • 学会等名
      12Th TOIN Internationa Symposium on Biomedical Engineering
  • [学会発表] Functional analysis of CD9 and micro-exosome facilitating sperm-egg membrane fusion2017

    • 著者名/発表者名
      Maito Hanai, Kenji Yamatoya, Woojin Kang, Natsuko Kawano, Kenji Miyado
    • 学会等名
      12Th TOIN Internationa Symposium on Biomedical Engineering
  • [学会発表] 母性の自然免疫が妊孕性に及ぼす影響2017

    • 著者名/発表者名
      河野 菜摘子、吉田 薫、岩本 晃明、吉田 学、宮戸 健二
    • 学会等名
      第40回日本分子生物学会
    • 招待講演
  • [図書] Encycropedia of Reproduction 2nd. Edition Vol. 1: Male Reproduction2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshida, M., Kawano, N., Iwamoto, T., and Yoshida, K.
    • 総ページ数
      3864
    • 出版者
      Elsevier
    • ISBN
      9780128118993
  • [産業財産権] 妊娠中の母子の健康状態改善剤2018

    • 発明者名
      河野菜摘子、加賀谷伸治
    • 権利者名
      河野菜摘子、加賀谷伸治
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-013395

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi