研究課題
本研究では、各種天然バイオマス素材から単離抽出したセルロースナノファイバーを用いて集積構造を構築し、熱伝導物性を解明することを目標とした。初年度は、高純度セルロースナノファイバーを段階的に配向制御した集積フィルム材料を調製し、熱伝導率の異方性を詳細に解析したところ、配向方向に200%以上高い熱伝導性が実測され、フィルム面内で伝熱異方性を有する集積体であることを明らかにした。この伝熱異方性フィルムは、高密度実装が進むエレクトロニクス向けの指向性排熱基材として期待されるが、デバイスへの実装を考慮したとき、その集積構造の形成プロセスと物性の関係や、光学特性など他物性との関連性など、伝熱性と組み合わせる性能を制御することが重要となる。そこで今年度は、まずセルロースナノファイバー分散状態から乾燥集積体に至るまでの集積過程を明らかにした。乾燥過程にあるナノファイバー水懸濁液の光学複屈折を上下両方向から観測するシステムを独自に構築し、乾燥中の複屈折挙動からナノファイバーの集積プロセス解明を試みた所、分散状態の繊維がまず厚み方向に層を形成しながら集積し、乾燥による濃縮がさらに進むと、その層内でも配列化を起こすことで最終的な乾燥集積体に至ることが明らかになった。次に、形成した配向集積フィルムを用いて光学特性解析を行い、セルロース分子鎖における固有複屈折を推定することに成功した。直線状分子鎖の最大複屈折である固有複屈折の推定のため、伸び切り鎖結晶のナノファイバーが最も有利な構造である上、X線回折測定により配向度を正確に導出可能である点も有利である。このフィルムに対して位相差分布測定システムを用いることで、画角あたり11万点以上の位相差データを分布解析し、精密な複屈折の解析を実現した。結果として、セルロースナノファイバーにより光学異方性と伝熱異方性が同時制御できることが解明された。
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ACS Macro Letters
巻: 3 ページ: 250~254
10.1021/acsmacrolett.9b00024
Colloids and Interfaces
巻: 2 ページ: 71~71
10.3390/colloids2040071