フランスとインドシナについての研究はこれまで歴史や社会的な面からは多くの研究がなされてきたが、文学からのアプローチはまだ少なかった。とくにフランス式教育を受けたベトナム人知識人の出版物に関しては、その後ベトナムが独立したことにより日の目をみることがなかった。今回本研究で扱ったグエン・ヴァン・ヴィンは長い間親仏主義者として見られていたが、彼が目指していたのはフランスに同化することではなく、フランス語を用い他のフランス植民地と連携することで、ベトナムが社会的にも、経済的にも独立することだった。この点は今までの研究では言及されておらず、本研究の成果といえる。
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