ポジティブ情動への恐れなど,ポジティブ情動に対する態度が,ポジティブ情動体験の抑制につながっている可能性はあるかを検討するため、うつ病患者15名を対象に、他者のあいまいな表情をポジティブ(笑顔)に認知しやすいか、ネガティブ(怒り)に認知しやすいかを検討する課題を実施した。具体的には、自己批判を和らげ、自己への思いやりを高める認知行動療法的介入を行ったうつ病患者群に対し介入前後にパソコンを用いた表情認知課題を実施した。自己批判や自己への思いやりの欠如がポジティブ情動の体験の抑制につながっているとすれば、これらに対する介入を行ったうつ病患者は、情動刺激をポジティブに受け取りやすくなり、あいまいな表情の認知がよりポジティブに変化すると考えられる。現在、待機群と介入群の課題結果を比較する分析を行っている。 また、自己認知がどのようにポジティブ情動体験や抑うつ傾向と関連するかを検討するための実験の準備、予備実験を実施した。具体的には、自己顔を刺激として呈示した際の脳活動を機能的MRIと脳波計を用いて計測し、脳活動とポジティブな認知や情動体験、抑うつ傾向との関連を検討できるような実験課題を作成した。実験では自己顔をプライム刺激として呈示し、その後性格特性語についてポジティブかネガティブかの判断を行う課題を参加者に課して、自己に対する潜在的な態度について検討できるようにした。パイロットデータとして3名の参加者のデータを取得した。
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