研究課題/領域番号 |
17K18172
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
渡邉 孝継 立正大学, 社会福祉学部, 助教 (00769466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害児 / 社会的コミュニケーション / QOL / 視線・表情の読み取り / Kid-KINDLER / 対人刺激 |
研究実績の概要 |
第2年次の研究では,ASD児が視線理解促進プログラムを受けた結果,ASD児本人の幸福感・満足感が上昇したかどうかの検証を行った。視線理解促進プログラムとは,第1年次の研究において,自閉症スペクトラム障害(ASD)児が困難としている,他者への表情や他者の表情への注目行動や注意方向の理解を促進するために開発したプログラムであった。このプログラムを実施することで,ASD児が他者へ注目し,コミュニケーションの円滑化が達成されることが想定されていた。そのため,第2年次の研究では,視線理解促進プログラムを実施した結果,コミュニケーションの円滑化が達成されたことにより,ASD児のQOLが上昇したかどうか検証することを第2年次の研究の目的とした。ASD児の幸福感・満足感の評価のため,児童のQOLを測定する尺度の日本語版のKid-KINDLRを使用した。Kid- Kid-KINDLRは,①身体的健康,②情動的well-being,③自尊感情,④家族,⑤友達,⑥学校生活の6領域について各4項目ずつ合計24項目から構成された。Kid- Kid-KINDLRは,保護者とASD児本人の双方に実施した。視線理解促進プログラムの実施前後で比較した結果,①保護者のQOL総得点は上昇したが,対象児のQOL総得点は下降したこと,②得点は一律に上昇・下降するわけではないこと,③社会的な側面を表す“友達”の項目が対象児と保護者の双方が減少することが明らかになった。このことについては,「事例研究」として学術研究論文を執筆投稿する計画にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り,ASD児へ視線理解促進プログラムを実施した結果,ASD児本人の幸福感・満足感が上昇したかどうかの検証を行うことができた。そして,第1年次の成果を1編の学術研究論文として,第2年次の成果を1件の学会発表として公表した。さらに,当初計画していなかった,他者の視線方向や表情を参考にした対人相互交渉の方略の獲得に関するデータを追加的に収集することができた。しかしながら,追加的なデータの収集を行ったため,その成果の学術研究論文を執筆投稿が残っている。以上を総合した結果,おおむね順調に進展していると判断した。 なお,第3年次において第2年次の成果を,「事例研究」として学術研究論文を執筆投稿する計画にしている。
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今後の研究の推進方策 |
第2年次の研究結果から,本研究におけるASD児へ視線理解促進プログラムの結果,①保護者のQOL総得点は上昇したが,対象児のQOL総得点は下降したこと,②得点は一律に上昇・下降するわけではないこと,③社会的な側面を表す“友達”の項目が対象児と保護者の双方が減少することが明らかになった。特に③については,本研究の視線理解促進プログラムにおいては,コミュニケーションの一部しか扱わないため,他者の視線や表情の意味を理解したが,友達とのコミュニケーションに対応しきれないことが推察された。これらのことから,今後の研究においては,視線や表情の意味の理解だけでなく,数多くのコミュニケーションの方略を習得する必要があると推察された。そのため,今後の研究では,コミュニケーション方略の幅を広げるための介入プログラムの開発を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初予定していなかった,他者の視線方向や表情を参考にした対人相互交渉の方略の獲得に関するデータを収集することができた。これらのすべてのデータを学術論文として公表するため,第3年次に研究費の一定額を次年度に繰り越す必要があった。 (使用計画) データを入力補助のアルバイトを雇うための人件費とデータ入力に必要な機器の物品費,データの発表のための旅費と論文公表のための論文校閲費として執行することを計画している。
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