研究課題/領域番号 |
17K18174
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬路 智仁 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80779257)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 多文化共生 / 文化シオニズム / トランスアトランティック知性史 / 文化多元主義 / 人種主義 / 大西洋思想 / 多文化主義 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、19 世紀末から20 世紀前半の時期を対象とする大西洋横断的な政治思想史叙述への貢献を念頭に、文化シオニズムを軸とした初期多文化主義論をめぐるトランスアトランティックな思想交流・知的共鳴関係の内実を明らかにすることである。
昨年度の成果に基づき、本年度は以下の三つの作業に集中した。 ①第一に、初期多文化主義論が国民国家内ではなく、ブリティッシュ・コモンウェルス(特にその中の移住植民地帝国)という巨大政治共同体を舞台として、どのように構想・展開されたかを検討した。②第二に、アメリカにおける初期多文化主義論者であり、今日にほぼ忘却された思想家でもあるランドルフ・ボーンの思想の掘り起こし、分析を行った。③第三に、昨年度に引き続き、間のトランスアトランティックな知的交流やそこでの相互的インパクトを分析するための理論的枠組みの精緻化に努めた。④なお備考として、今年度はイギリスやアメリカでの資料調査を予定していたが、現地に行かずとも電子的に取り寄せることが可能であったため、この予定は変更した。その分に念頭に置いていた経費は、2019年度の海外ワークショップへの出張経費に充てることを計画している。
また、このような作業の過程で、重要な研究会の場での報告や論文公刊を行い、関連研究者からのフィードバックの獲得や自身の知見の深化に努めた。具体的に得られた研究成果は以下の進捗状況に記すとおりである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的および研究計画に照らし、主に以下のような研究成果(学会報告、論文公刊)を挙げることができ、順調に進展しているといえる。これらは、全体的・直接的に、あるいは少なくとも部分的に本研究に関連しているものである。①論文「コモンウェルスという神話―殖民・植民地主義、大ブリテン構想、ラウンド・テーブル運動をめぐる系譜学―」(竹内真人編『ブリティッシュ・ワールド―帝国紐帯の諸相―』日本経済評論社、2019年2月)、②事典論文“The Round Table Movement,” in Mark Doyle ed, The British Empire: A Historical Encyclopedia (Santa Barbara, CA: ABC-CLIO, July 2018)、③書評「池田有日子『ユダヤ人問題からパレスチナ問題へ―アメリカ・シオニスト運動にみるネーションの相克と暴力連鎖の構造―』(法政大学出版局、2017年)」『社会思想史研究』第42号(2018年9月)、④研究報告「跨境・人種(主義)・コモンウェルス―第一次大戦期から1920年代のアングロアメリカと日本―」第198回国際関係論研究会(東京大学、 2018年9月)。
|
今後の研究の推進方策 |
研究課題の最終年度にあたることから、本研究の最終成果を英語論文としてまとめ、英語圏の著名な学術雑誌に投稿する予定である。その準備段階として関係分野にフォーカスしたイギリスにおける若手ワークショップなどで研究報告を行うことを意図している(2019年4月現在のところ、9月にイギリス・ダラム大学で、11月に同・マンチェスター大学で研究報告を行う計画がある)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は海外での資料調査を予定していたが、現地に行かずとも電子的に取り寄せることが可能であったため、この予定を変更した。その分に念頭に置いていた使用額は、2019年度の海外ワークショップやカンフェレンスでの研究報告のための出張経費に充てることを計画している。
|