研究課題/領域番号 |
17K18175
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
波多江 悟史 早稲田大学, 法学学術院, 講師(任期付) (10792947)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 新聞の自由 / 受信料判決 / 企業の社会的責任 |
研究実績の概要 |
商業メディアの企業性と公共性について憲法学的に考察する本研究は、2017年度においては、1970年代におけるドイツ憲法学を素材にして、新聞の内部的自由をいかに確保するか、および新聞に独占禁止法を適用することはいかにして正当化されるかということを検討することによって、新聞の企業性の憲法保障がいかなる理論内容を有するとされたのかを解明する予定であった。 この点に関しては、内外の文献を調査することによって、当時のドイツにおいて新聞の独占がいかにして進展し、その結果として新聞の多様性がどのように失われていったのかを明らかにすることができた。しかし、本年度の研究計画は、次の2点において大きく変更することになった。 第1に、2017年中に最高裁大法廷が受信料制度の憲法適合性について判断を下すことが予定されていたため、本年度においては、放送の自由に関連して下された日本の裁判例を網羅的に検討することになった。その結果として、民放局設立時における一本化のための行政指導、民放連放送基準の法規範性の有無と程度、民放局による敵対的買収防衛策としての新株予約権発行の適否など、民放局に関する憲法問題について考察を深めることができた。 第2に、ドイツにおける新聞企業について研究する中で、私的企業が社会的役割を果たすことが期待されているのは、メディアという領域に限定されないということが強く感じられるようになったため、本研究の検討対象を商業メディアだけでなく株式会社一般に拡大することにした。商業メディアにおける企業性と公共性の関係は、商業メディアを私的企業一般の中に位置付けることによってより明確にすることができると思われたからである。株式会社の社会的責任に関する憲法問題については、最近のフランス公法学において活発に議論されていることが判明したので、2018年3月にはパリに赴き文献を収集することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに上記において述べたように、2017年度は1970年代ドイツにおける新聞の企業性の憲法保障について研究を予定していたが、その研究を完了する前に、研究対象を変更する必要が生じてしまった。したがって、現在においては、日本における放送の自由についての裁判例を整理しながら、フランスにおける株式会社の社会的責任に関する公法理論を検討しているところである。この問題については、当初の研究計画では想定することができておらず、いまだ十分に文献を読み込むこともできていないので、研究遂行に想定外の時間を要してしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
以上のように、1970年代ドイツにおける新聞の企業性の憲法保障について、十分に研究を完遂することはできていないが、2018年度においては、フランスにおける株式会社の社会的責任に関する公法理論の検討を継続しながら、ドイツにおける商業放送の自由に関する研究に移ることにしたい。フランスにおける株式会社の社会的責任に関する公法理論は、2018年度中にまとめて論文として公表する予定である。そして、ドイツにおける商業放送の自由に関する研究について、遅滞なく研究を開始するように尽力したい。
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